2015年09月06日

サヴァリッシュのワーグナー:歌劇「タンホイザー」(1962年、バイロイト・ライヴ)


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1962年に行われた、バイロイト公演でのライヴ録音で、若きサヴァリッシュの素晴らしい貴重な記録である。

『タンホイザー』には1845年に、ドレスデンでこの作品が初演されたときの「ドレスデン版」と、それから16年後の1861年にパリで上演された際、第1幕冒頭のバレエ部分を拡大改訂した「パリ版」の2つの版があるが、これは、バイロイトで長らく使用されてきた「ドレスデン版」と「パリ版」とを組み合わせた演奏である。

ワーグナーのオペラのなかでは『タンホイザー』は比較的ディスクに恵まれていないのではなかろうか。

決定的名盤はと訊かれて、他の作品ならば選ぶのに苦労するほどだが、このオペラについてはすぐに思い当たる盤はない。

それは作品自体に「ドレスデン版」は音楽の説得力がやや弱く、「パリ版」は全体の統一を欠くという弱点があることと無関係ではないかもしれない。

サヴァリッシュ以来バイロイトが慣用するようになったこの折衷版がさしあたっての妥協案であろう。

そうしたなか、この1962年のバイロイト・ライヴは、当時まだ30代だったサヴァリッシュのストレートな音楽づくりと黄金期の名歌手たちが一体となった秀演と言えるだろう。

このときの公演は、今は亡きヴィーラント・ワーグナーの名演出と、当時39歳だったサヴァリッシュの、颯爽とした速めのテンポで、新鮮な感覚にあふれた表現が評判となり、大成功を収めた。

このディスクは、その充実した舞台の雰囲気を生々しく収録したもので、聴き手の心をつかんで離さない大変すぐれた演奏である。

1960年代初頭のサヴァリッシュのバイロイトでの活躍の中でも、この『タンホイザー』はとりわけ傑出している。

サヴァリッシュはバイロイトのオーケストラを的確に掌握し、ワーグナー中期作品にふさわしい瑞々しい味わいを引き出している。

サヴァリッシュの指揮は、速めのテンポで生き生きとした音楽を奏で、録音のせいか、あまり重厚さは感じないが、軽快に音楽が進んでいき、推進力がありながらも、全体を手堅くきちっとまとめている。

知がしばしば勝ちすぎることも多いサヴァリッシュだが、ここでは知と情の絶妙なバランスが、熱気を帯びたドラマを形成していく。

全盛期のヴィントガッセンの力強いタイトルロールをはじめとして、当時大きな話題を巻き起こした2人の新人、シリアとバンブリーの新鮮な若々しさ、そしてずらりと脇を固めたヴェテランたち(ヴェヒターやグラインドル)の見事な歌唱など、今もなお、雰囲気にあふれた『タンホイザー』のベスト・レコードのひとつと言える。

とりわけ、タンホイザーを歌っているヴィントガッセンの老巧でありながら輝かしく、雄弁で力強い声による歌唱がひときわ光っており、主役にぴったり。

シリアのエリーザベトや“黒いヴェーヌス”として話題となったバンブリーのヴェーヌスもこの役にふさわしく、声の鮮烈な透明さが劇を引き締めて、サヴァリッシュの棒に立派にこたえている。

録音状態も良好で、拍手はカットされているが、実際の上演を基に作成された録音のようで、実際のバイロイト祝祭劇場で聴いているような錯覚に陥るほどだ。

サヴァリッシュのバイロイト公演には、他にも『さまよえるオランダ人』(1961年)、『ローエングリン』(1962年)も遺されており、いずれもサヴァリッシュのバイロイト公演の最高の記録が刻まれている。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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