2015年07月26日

リヒターのバッハ:カンタータ集(26枚組)


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ここに収められたCD26枚のバッハの教会カンタータ集は以前アルヒーフから同内容でリリースされ、既に法外なプレミアム価格で扱われているもので、今回のユニヴァーサル・イタリーによる全歌詞付126ページのブックレットを伴ったバジェット盤企画の快挙を評価したい。

尚BWV26及びBWV51でのソプラノは前者がウルズラ・ブッケル(1966年)、後者がマリア・シュターダー(1959年)が歌った旧録音の方が採用されている。

カール・リヒターは1959年からこのカンタータ集の録音に取り組み、その精力的な活動は78年まで続けられたが、彼が54歳の若さで他界しなければ、更に多くのセッションを遺してくれたであろうことが惜しまれる。

このセットには教会歴に従いながら75曲の作品が収録されていて、どの曲を聴いても生命力に漲るリヒターの強い個性が発揮された鮮烈な音楽が蘇ってくる。

それはリヒターの一途でひたむきな宗教観とバッハの音楽への斬新な解釈が、音源の古さを通り越してひとつのドラマとして響き渡るからだろう。

勿論リヒターの名を不動にした『マタイ』、『ヨハネ』の両受難曲や『ロ短調ミサ』などの大曲も彼の最も輝かしい演奏の記録には違いないが、彼はプロテスタントの教会で日常的に歌われるカンタータの研究の積み重ねによって、初めてバッハの宗教曲の本質が理解できるようになると考えていた。

確かにバッハが生涯に250曲もの教会カンタータを作曲したとすれば、それはバッハの全作品中最も高い割合で書かれたジャンルになり、如何に心血が注がれた作品群であるかが納得できる。

リヒターが指揮棒を握る時にはソリストやコーラスだけでなく、オーケストラにも彼の熱いスピリットが乗り移ったような統一感が生まれる。

この時代はまだ古楽の黎明期で、モダン楽器とピリオド楽器を混交させながらの奏法も折衷様式をとっているが、そうした条件を補って余りあるほどリヒターの演奏には不思議な普遍性がある。

リヒターの高い精神性に導かれた隙のない、そして全く弛まない緊張感が時代を超越して聴き手に迫る驚くべき手腕は流石だ。

リヒターはルター派の牧師の父を持ち、最初に音楽教育を受けた学校が宗教色の強い環境だったことも彼のその後の活動に色濃く影を落としている。

当然リヒターの少年時代にとって聖書講読や教会歴に沿った行事での演奏は、切り離すことができない生活の一部だったことは想像に難くないし、後のライプツィヒ聖トマス教会のオルガニストを始めとする教会でのキャリアは、バッハの研究者として彼に課された宿命的な仕事だったに違いない。

このカンタータ集は彼のバッハへの哲学が集約された音楽の森とも言うべき優れた内容を持っていて、将来に聴き継がれるべき演奏である筈だ。

特に新しいリマスタリングの表示はなく、足掛け20年に亘る音源なので、時代によって音質に若干のばらつきがあるのは致し方ないが、幸い全体的に鮮明で良質な音響空間が得られていて鑑賞に全く不都合はない。

ブックレットには詳細な曲目、演奏者及び録音データと、リヒターとバッハのカンタータについての英語解説、そしてオリジナルのドイツ語による全歌詞が掲載されている。

ボックス・サイズは13x13x6,5cmでシンプルなクラムシェル・タイプの装丁だが、品の良いコレクション仕様に好感が持てる。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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