2015年07月18日

クーベリック/HMV音源集


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ラファエル・クーベリック生誕100周年の記念企画盤になり、1946年から83年にかけて彼がHMVに残した音源が13枚のCDにまとめられてイコン・シリーズに加わった。

何故か発売が数ヶ月間延期されていたが、決して同レーベルへの総ての音源を網羅した集大成ではない。

クーベリックが1983年にデンマーク放送交響楽団を振ったニールセンの交響曲第5番を除けば、1960年及び61年のウィーン・フィルとのモーツァルト、シューベルト、ボロディンそしてチャイコフスキーなどの交響曲集の良好なステレオ録音がCDほぼ5枚分を占めている。

一方フィルハーモニア管弦楽団とのモノラル録音は、いくらか素描的なところがあり英国時代の過渡的な演奏と言えなくもない。

その意味ではロイヤル・フィルとのベートーヴェンの『田園』やシューベルトの『ザ・グレート』、ブラームスの『ハンガリー舞曲集』などがクーベリックのより徹底した統率と音楽性を示している。

特に『田園』は自然の包容力やその恩恵を表出し得た優れた演奏だ。

またこれらの録音では第2ヴァイオリンを上手に並べ替えた両翼型の音響効果も至るところで感知できる。

このセットの中では最も古いチェコ・フィルとの1946年の音源では、ワックス原盤からのものと思われるスクラッチ・ノイズが聞こえるが、ヤナーチェクの『シンフォニエッタ』は当時のクーベリックの熱っぽい音楽を伝えて余りあるものがある。

1948年に英国に亡命したクーベリックだが、祖国チェコの作曲家の作品の解釈にはやはり借り物でない、筋の通った力強さと血の騒ぐような情熱が感じられる。

ここではドヴォルザークの交響曲第7番、第8番(フィルハーモニア管、1948年及び51年)を始め、ヤナーチェクの『タラス・ブーリバ』、マルティヌーの『ピエロ・デッラ・フランチェスカのフレスコ画』(ロイヤル・フィル、1958年)、『ふたつの弦楽オーケストラ、ティンパニとピアノのための複協奏曲』(フィルハーモニア管、1950年)などで、のっぴきならない緊張感と共にクーベリックの生命力に溢れる表現力を堪能できる。

またクーベリックはモーツァルトを得意としたが、このセットでも交響曲集の他に殆んどCD1枚分に当たるオペラ序曲集などの充実したレパートリーが記録されている。

とりわけ4曲の交響曲をウィーン・フィルとのステレオ録音で鑑賞できるのは幸いだ。

クーベリックは1980年代に入ってから手兵バイエルン放送交響楽団とソニーに再録音して、高踏的な均衡でその円熟期の境地を示したが、更に20年遡るこのセッションは今や話題に上らなくなっている。

しかし曲想の流れに沿った、ごく自然な響きの美しさを開拓している点では捨て難い魅力を持っているのも事実だ。

クーベリックの常に明快でパッショネイトな音楽への取り組み方はどの曲を聴いても明らかだが、それは決して感情に任せた即興的なものではなく、ダイナミズムの配分が良く計算された強い説得力を持ったオリジナリティーに溢れている。

クーベリックは沈潜した内省的な表現よりも外に向かって発散する光彩のような音楽を作り上げることを得意とした、言ってみれば理論を感性に完全に移し換える術を知っていた指揮者だったと思う。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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