2015年08月08日

フェリアー/コンプリート・デッカ・レコーディングス


この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。



コントラルトという低い声質にはソプラノやメゾ・ソプラノのような華やいだ響きはないにしても、フェリアーはかえってそのナイーヴな声で飾り気のない表現を得意として、本来歌唱芸術が持っているもうひとつの要素、つまり音楽と文学との結び付きという側面を、より深い洞察と同時に鋭いインスピレーションで捉えた演奏を数多く遺している。

フェリアーは基本的に舞台の上で大音声で演じるオペラの世界の人ではなく、むしろ人間の喜怒哀楽や人生観が数分間に凝縮された形で表現される歌曲にその本領を発揮した。

美声ではあっても外面的にあでやかな響きを持たない暗い声質ゆえに、聴く人の注意がその音楽の内面に向けられるのは、ある意味では当然かも知れないが、声の深みがそのまま表現の深みに昇華され、強い説得力を持ち得ているのはフェリアーの類い稀な才能の証しだろう。

特に死をテーマにしたブラームスやマーラーの曲では早世したフェリアーの宿命的な直感さえ窺わせている。

この14枚のCDに収められた曲の中でも、特に印象に残るものを幾つか拾ってみると、先ず1949年のエディンバラ音楽祭からのライヴで、ブルーノ・ワルターのピアノ伴奏によるシューマンの『女の愛と生涯』が筆頭に挙げられる。

お世辞にも良い音質とは言えないが、個人的に言えば筆者がこの曲集の真価を知ったのは、フェリアー&ワルターの演奏を聴いてからであった。

というのもフェリアーの歌には芝居めいた虚飾を感じさせるところが皆無で、一人の女性のドラマが忽然と浮かび上がってくるからだ。

勿論大指揮者ワルターからの薫陶を無視できないにしても、フェリアーの歌唱はそれまでになかったほどの高い音楽性に達し得たと言えないだろうか。

またイギリス民謡集も素朴だが機知に富んでいて限りない愛着がもてるものだ。

無伴奏で歌われる『吹けよ南の風』はボーナスDVDの中でも使われている小曲だが、そのシンプルさゆえに少女の想いが大自然を駆け抜けていくような、メルヘンの世界に誘ってくれる。

その他にも大曲では、クレメンス・クラウス指揮、ロンドン・フィルとのブラームスの『アルト・ラプソディ』、オットー・クレンペラー指揮、コンセルトヘボウとのマーラーの『亡き子を偲ぶ歌』及び『復活』、ベイヌムとのブリテンの『春の交響曲』そしてワルター指揮、ウィーン・フィルによるマーラーの『大地の歌』などは聴き逃せない。

このボックスセットはキャスリーン・フェリアーの生誕百周年記念として、彼女が生前デッカに遺した録音総てを網羅したもので、モノラル録音のCD14枚とDVD1枚で構成されている。

これまでにこれに準ずる全集は既にLP時代からリリースされていたが、完全にひとつのセットに組み込まれたのは初めてで、おそらくこうした企画は将来においても当分期待できないだろう。

ブックレットは170ページで、全曲歌詞英語対訳付の親切な配慮がされている。

DVDは既出のBBC制作のテレビ放送番組で、フェリアーの生涯を約1時間で綴っている。

フェリアー自身の動画はごく限られたものだが、ベンジャミン・ブリテンを始めとして、家族や知人そして音楽仲間や医師へのインタビューが興味深い。

学校を卒業した後、電話交換手として働いていたことやピアノの才能にも恵まれていたこと、輝かしいキャリアと41歳で癌によって亡くなるエピソードなどが語られている。

ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング



フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室



classicalmusic at 20:55コメント(0)トラックバック(0)フェリアー  

トラックバックURL

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
メルマガ登録・解除
 

Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

Categories
Archives
Recent Comments
記事検索
  • ライブドアブログ