2015年07月16日

ドキュメンタリー:カルロス・クライバー「アイ・アム・ロスト・トゥ・ザ・ワールド」〜私はこの世に忘れ去られて[DVD]


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2004年に逝去した伝説のカリスマ指揮者、カルロス・クライバーのドキュメンタリー映像作品で、完璧主義であったがゆえに苦悩した天才カルロス・クライバーの実像が克明に描かれている。

カルロス・クライバーは、取り上げるレパートリーを極端に絞り込み、少ない演奏会、決して多くはない録音ではあったが、ひとたび舞台に上がると聴く者すべてを魅了する演奏をした、生きながらにして伝説の指揮者であった。

このDVDの冒頭で『イゾルデの愛の死』を指揮するクライバーの殆んど神々しいまでの姿が非常に印象的で、それは狂気と紙一重のところで成り立っていた彼の芸術を図らずも暗示しているように思える。

ドキュメンタリーの中では父エーリッヒの姿もしばしば登場する。

カルロスにとって指揮者エーリッヒの存在は、永遠に解き放つことができない呪縛でもあった。

そして父とは異なったやり方を見出さなければならないという、一種の恐怖感が生涯彼を苛んでいたのも事実だろう。

また多くの人がインタビューで証言しているように、完璧主義者ゆえに自分の思い通りにならないと、一切を投げ捨ててしまう性癖があった。

ここでは彼が土壇場になってキャンセルしたオペラ公演やコンサートの逸話も少なからず語られている。

ウィーン・フィルとベートーヴェンの交響曲第4番のリハーサル中に楽員たちと衝突してその場を去ってしまう、いわゆる「テレーズ事件」の時の劇的な音声も幾つかのスナップ写真と共に生々しく記録されている。

「どうしてできないんだ、こんなことで長い時間議論しなければならないなんて!」と強い調子で訴えるクライバー。

しかしウィーン・フィルのような古い伝統を引っさげたオーケストラは唯でさえ指揮者の言いなりにはならない。

まして彼らがプライドを傷つけられれば尚更だ。

両者の気まずい緊張の中でクライバーは「10分間休憩」の指示を出してそのまま帰ってこなかったし、定期演奏会もキャンセルしてしまった。

この作品を制作したゲオルク・ヴュープボルトはクライバーの父エーリッヒ、そして母のルース、更にはカルロス自身の自殺説を仄めかしている。

末期の癌患者だった彼が妻を失った後、単身彼女の故郷スロベニアのコンシチャに向かい、病院ではなく彼らの別荘で扉も窓も閉ざしたまま亡くなっているところを発見されたという証言は確かにどこか謎めいている。

真相は分からないが、彼は明らかに死を待っていたし、またその時期も悟っていた。

そして故意に家族から遠ざかって孤独の死を選んだ。

偉大な指揮者の華やかで劇的な生涯の終焉は意外なほど慎ましく寂しいものだった。

インタビューを受けた人達は演出家オットー・シェンク、指揮者ヴォルフガング・サヴァリッシュ、リッカルド・ムーティ、歌手イレアナ・コトルバス等の他に当時のオーケストラの団員、マネージャー等多岐に亘っているが、全体的にみて作品の演出的要素は控えめで、彼らの証言によって視聴者自身がクライバーのバイオグラフィーをイメージできるように構成されている。

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classicalmusic at 22:53コメント(0)トラックバック(0)クライバー  

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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