2015年07月20日
リヒテル/1993年シュヴェツィンゲン音楽祭ライヴより
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ヘンスラー・クラシックスからリリースされているシュヴェツィンゲン音楽祭の一連のライヴ音源のひとつで、リヒテルが1993年5月30日に同邸内のロココ劇場で演奏した一晩のコンサートのプログラムが収録されている。
曲目はサン=サーンスのピアノ協奏曲第5番ヘ長調『エジプト風』及びガーシュウィンのピアノ協奏曲ヘ長調で、後者は初出ではないがリヒテルの演目としては唯一の音源のようだ。
ライナー・ノーツにも書かれているが、旧ソヴィエト時代には自国でこうした曲目を演奏する可能性はまだ閉ざされていたにも拘らず、リヒテル自身は気に入って秘かにレパートリーに加えていたことが想像される。
どちらもクリストフ・エッシェンバッハ指揮、シュトゥットガルト放送管弦楽団のサポートによる、リヒテル最晩年の演奏活動を知る上でも貴重なライヴで、当時彼が78歳だったことを考えれば、その衰えない情熱と意欲には敬服せざるを得ない。
しかもリヒテルはセッションではなく、あくまでもライヴで勝負するというポリシーを生涯貫いたピアニストでもあった。
サン=サーンスでは色彩感豊かな音響作りに工夫が凝らしてあって、中でも第2楽章のオリエンタルで神秘的な表現は巨匠リヒテルとしても異色な趣きを醸し出している。
また随所に使われている超テクニカルなパッセージも曲想の中に自然に処理されていて、技巧誇示にならないのは流石だ。
エッシェンバッハのきめ細かい指示も活かされているが、一方ガーシュウィンの方はそれがかえって裏目に出て、オーケストラがいくらか杓子定規で乗りの悪いものになっているのも事実だ。
例えば第2楽章でのミュート・トランペットのソロは抑え過ぎで、もう少し開放感があっても良いと思う。
リヒテルも全体的にテンポをかなり落としているが、マイペースで演奏を楽しんでいる雰囲気が伝わってくるのが微笑ましい。
どちらもライヴ特有の雑音や拍手はなく音質は極めて良好。
ちなみにサン=サーンスの同曲については、リヒテルが1950年代初めにキリル・コンドラシンと協演した覇気に満ちた演奏もメロディアからの5枚組で入手可能だが、音質に関しては多くを望めない。
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