2015年07月20日

オペラ『領事』のテレビ映画化(日本語字幕付)[DVD]


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1963年制作でモノクロ作品ながら、皮肉にもそれがこのオペラ(メノッティ自身はミュージカル・ドラマと名付けている)の陰鬱さを助長している。

ルドルフ・カルティエ監督による演出は一見陳腐に見えるかも知れないが、彼の非凡さは随所に取り入れられている心理描写的な手法だろう。

例えば秘書がお役所仕事として人々に応対する時には常に無表情を装うサングラスをかけているがこれは一種の仮面で、彼女の人間的な心情が吐露される後半ではそれが外される。

この映像で見られるセットは必要最低限のシンプルなものだが、人間性とは裏腹な指定された書類だけが重要視される領事館という異質で空虚な空間を具現している。

作品のタイトルである領事は劇中一度も姿を現さないが、彼の演出ではシルエットのみでイメージさせている。

反政府活動家の夫を逮捕され、母も息子も失ったマグダがガス自殺を図る最後のシーンに出てくる幻影では、マジシャン、ニカ・マガドフに率いられてゾンビと化した人々が踊るワルツも独特な印象を与えている。

歌手のキャスティングでは当時着実にキャリアを積んでいたバリトン、エバーハルト・ヴェヒターによる主人公ジョン・ソレルと彼の妻マグダ役のソプラノ、メリッタ・ムゼリーの歌と演技が注目されるが、秘書のグロリア・レーン、秘密警察のウィリー・フェレンツ、マジシャンのラスロ・セメレなど芸達者な脇役陣を揃え、更にかつてのプリマ・ドンナ、リューバ・ヴェリチュがイタリア人の女役で登場している。

オリジナル・スコアは英語で書かれているが、この映画はウィーンで制作されたドイツ語版ということでも唯一のサンプルだろう。

画面には出てこないが、オーケストラはフランツ・バウアー=トイスル指揮、ウィーン・フォルクスオーパー管弦楽団が演奏している。

かなりの難曲で音質も時代相応のモノラル録音だが、職人的に手堅くまとめられている。

イタリアからの移民でアメリカを拠点に活動したメノッティの作品は、やはりイタリア・オペラとは切り離せない作風を示していて、この『領事』もモダンで斬新なオーケストレーションにアリア、重唱、アンサンブル・フィナーレなどの伝統的エレメントによって構成されている。

リージョン・フリーで字幕スーパーは英、仏、西、伊、日本語が選択できるが、ドイツ語による作曲者への短いインタビューの字幕は英語のみ。

日本語字幕については一部セリフにつじつまの合わないところがあるが概ね良好。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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