2015年07月21日
トリオ・リサイタル 1973
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シュヴェツィンゲン音楽祭での優れた音源を発掘しているドイツ・ヘンスラー・クラシックスから2014年の4月にリリースされたCDで、1973年の同音楽祭で演奏されたベートーヴェンのピアノ三重奏曲第3番ハ短調及びメンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第1番ニ短調の2曲を収録している。
これは、スーク、シュタルケル、ブッフビンダーによる室内楽の醍醐味を味わうことのできる名演奏である。
スークとシュタルケルは既にカッチェンとの協演でブラームスをデッカに録音していたが、カッチェン亡き後当時27歳だった新人ブッフビンダーがこのコンサートにキャスティングされたところに特徴がある。
実際スークとシュタルケルという2人のベテランをサポートするブッフビンダーのコントロールの行き届いた軽やかなタッチのピアニズムが如何にも瑞々しい印象を与えている一方で、彼はピアノ・パートの突出を巧妙に避け、抑制を効かせて常にトリオとしてのバランスを保つことをわきまえている。
それは後のアンサンブル・ピアニストとしてのキャリアにも通じる彼の確固としたポリシーだったに違いない。
プログラムの2曲はどちらもスーク・トリオのセッションが存在するが、この3人の顔合わせはもとよりシュタルケルのレパートリーとしてはまったく初めて耳にするもので、室内楽の愉悦を堪能できる1枚としてお薦めしたい。
ベートーヴェンではスークのリードする豊かな抒情性が活かされているが、それぞれが細部まで克明に合わせた見事なアンサンブルと、シュタルケルのチェロが扇のかなめのように構えて作品の音楽的構造を浮き彫りにした再現が秀逸だ。
メンデルスゾーンの方は作曲家特有のヴィルトゥオジティを発揮したフレッシュで屈託のない曲想が、三者の美しい音色と鮮やかな演奏によって更に爽快な印象を残している。
1973年5月16日のライヴのようだが、客席の雑音や拍手は一切入っていない良質のステレオ録音で、その音質の良さも特筆される。
ライナー・ノーツは11ページほどで、演奏曲目、録音データの他に独、英語による簡易な演奏者紹介と曲目解説付。
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