2015年07月25日
ウーギ&ティーポのモーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第40番、第32番
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イタリア・ヴァイオリン界の双璧といえばウト・ウーギとサルヴァトーレ・アッカルドで、イタリア国内でも彼らは根強い人気を二分している。
幸いどちらも同世代の現役として演奏活動を行っていて、イタリアお家芸の看板ヴァイオリニストといった存在だ。
ウーギは3歳年上のアッカルドと共に、コレッリ以来の伝統芸術を継承する典型的なヴァイオリニストであり、幼い頃から英才教育を受けることができた恵まれた環境に育った。
10歳の時パリに留学してエネスコが亡くなるまでの2年間彼に師事しているので、グリュミオーやメニューインとも同門下とも言えるが、その後に形成されたウーギのスタイルからはイタリアの音楽から切り離すことができない血統のようなものさえ感じられる。
ウーギの磨きぬかれた光沢のある滑らかな弦の響きと屈託のないロマンティシズムから導き出される仄かな官能性には比類がない。
このCDの音源は1979年のアナログ・セッションで、ピアノはマリア・ティーポが弾いている。
モーツァルトのようなシンプルな構造の音楽を完璧に演奏するのは難しい。
曲中に音楽的な表現や奏法の基礎が総て含まれている上に、ごまかしが利かないので演奏者の持ち合わせている長所も欠点もあらわになってしまうからだが、彼らの演奏は一点の曇りもないほど晴朗で、またアンサンブルの合わせでも古典的な均衡を崩さない第一級の手腕を示している。
ウーギの演奏の特徴は楽器が持つ総ての特性を引き出しながら、ムラのない美音を縦横に駆使するカンタービレにある。
ウーギのあざとさのないカンタービレと淀みのない開放的で自然なフレージングがことのほか美しい。
名器ストラディヴァリウスから奏でられる音色も極めて魅力的だが、耽美的でないことも好ましい。
あらゆるフレーズに歌が息づいているがそれが耽美的にならず、古臭さを感じさせないのはウーギがモーツァルトの様式感を決して崩さないからだろう。
一方ナポリ出身のティーポはイタリアでは数少ない女流ピアニストだが、彼女の母親がブゾーニの弟子だったということから名人芸だけでなく、楽理的にも造詣が深いことが想像されるが、ここでは意外にも抑制を効かせた歌心が発揮されていて伴奏者としても秀でた側面を聴かせてくれる。
ちなみにソニーからリリースされたウーギの録音集大成18枚組には何故かこのリコルディ盤のモーツァルト・ソナタ集は含まれていない。
当時のLP1枚分をそのままCD化したものなので収録時間が42分と短く、見開き1枚のイタリア語のリーフレットしか付いていないが、ここでウーギが使用しているヴァイオリンは1701年製のストラディヴァリウスで、かつてベートーヴェンの友人でもあったルドルフ・クロイツァーの所有していた楽器との説明がある。
ストラディヴァリウス特有の明るく伸びやかで、しかも深みのある音色が特徴で、録音状態の良さと相俟ってウーギの至芸が理想的な音質で鑑賞できる1枚だ。
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