2015年08月05日
シュタルケル/EMI&エラート・レコーディングス
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シュタルケルがEMIに遺した音源とエラートに録音したブラームスとベートーヴェンのチェロ・ソナタ全集をまとめたセット。
録音時期は、EMIはシカゴ交響楽団在籍中だった1956年から、退団の翌年である1959年までの3年間で、エラートは1959年となっている。
これらの録音は、マーキュリー・レーベルへの一連の録音よりもさらに若い頃におこなわれただけあって、パリでソリストとして名をあげた時代に近い、フレッシュで自由な意気込みのようなものも感じられる。
若い頃の録音とは言っても、このボックスにはステレオ音源も多く、シェベックとのベートーヴェンとブラームス、ジュリーニと共演したシューマン:チェロ協奏曲、ボッケリーニ:チェロ協奏曲G.482、ハイドン:チェロ協奏曲第2番、サン=サーンス:チェロ協奏曲第1番に、ジュスキント共演したドヴォルザーク:チェロ協奏曲とフォーレ:エレジー、そしてジェラルド・ムーアの伴奏で録音したチェロ小品集などをステレオで堪能することができる。
最初のCD2枚では直線的に弾き切る飾り気のない堅牢なバッハと、何かに憑かれたように猛進するコダーイの両無伴奏に改めて驚かされる。
そこにはシュタルケルの生涯の課題となったバッハの『無伴奏チェロ組曲』の原点が記録されているし、また他の追随を許さなかったコダーイの『無伴奏チェロ・ソナタ』では、既に非の打ちどころのない完璧な表現が示されていると言えないだろうか。
どちらの曲もシュタルケルらしい鍛え抜かれた精緻なテクニックと覇気に支えられているが、音楽に対する自身の強い情熱を個性としてぶつけるのではなく、冷徹とも言える頭脳的ストラテジーの際立った真似のできないスタイルが確立された演奏集で、他の協奏曲や室内楽と合わせてシュタルケル・ファンには聴き逃せない音源である筈だ。
ここでは、比類ないテクニックに裏打ちされた豊かな音楽性が、凛と張りつめた緊張感の中に端正に表現されている。
またハンガリーの朋友シェベックとのブラームスとベートーヴェンのソナタ集での、剛毅かつ柔軟な演奏も卓越したアンサンブルの例だろう。
シュタルケルはブラームスを数年後にやはりシェベックと組んでマーキュリーにも入れているし、ベートーヴェンの方もブッフビンダーとの再録音もあり、こちらは音質ではやや劣っているが、大家の風格を備える前の演奏として興味深い。
一方協奏曲についてはボッケリーニ、ハイドン、シューマン、サン=サーンスが最近ジュリー二のボックス・セットで復活したが、ジュスキントとのドヴォルザーク、ドホナーニ、ミヨー、プロコフィエフの作品がここにまとめられているのは幸いだ。
ワーナーのイコン・シリーズとして当初の触れ込みでは9枚組で数ヶ月間の発売延期になっていたが、結局1959年のジェラルド・ムーアとの小品集を加えて10枚でリリースされた。
シュタルケル壮年期の演奏は、1960年代のマーキュリー・リヴィング・プレゼンスへの一連の録音が幸いその驚異的な音質で全曲復活しているが、その前の初期のセッションは入手困難になっていたし、最後のムーアとの小品集は初出音源で、シュタルケルとしてはあくまでも際物的なアンコール・ピースであったにせよ、魅力的で貴重なサンプルには違いない。
総てが1950年代後半の録音なので音質の面ではそれほど期待していなかったが、リマスタリングの効果もあって比較的良好な音質が蘇っている。
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