2015年07月28日
エリクソンのヨーロッパ合唱音楽集
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2013年亡くなったコーラスの権威、エリック・エリクソンへの追悼としてワーナーからリリースされた6枚組のバジェット・ボックスで、まさに合唱の最高峰、エリクソン畢生の名演がここに蘇った。
CD1−3が『5世紀に亘るヨーロッパの合唱音楽』そしてCD4−6が『華麗な合唱音楽』というタイトルが付けられた1968年から75年に録音されたふたつの曲集をまとめてある。
ルネサンスから現代までのナンバーを網羅し、とくに近・現代曲については難曲揃いで実際に音になっているものも少ないだけに、資料的価値のある曲集であるとも言える。
エリクソンは生涯をコーラスに捧げた合唱界の大御所というべき指揮者だけに、いずれも彼のスピリットとテクニックの真髄を感じさせる演奏が圧巻だ。
コーラス・グループはエリクソンによって鍛えられたストックホルム放送合唱団及びストックホルム室内合唱団で、彼らは一流どころの指揮者やオーケストラとも多く協演しているが、実際音楽の精緻さと表現力の多彩さは混声合唱の魅力を満喫させてくれる。
尚、この作品集では殆んどの曲がア・カペラ、つまり器楽伴奏なしで歌われている。
エリクソンはバーゼル・スコラ・カントールムで古楽を修めた指揮者でもあり、バード、ダウランド、タリスなどでも機智と抒情に富んだ豊かなファンタジーが聴き逃せないが、このセットの中でも20世紀の合唱曲は難易度から言えば最高度のアンサンブルの技術を問われる作品ばかりで、シェーンベルク、バルトーク、ピッツェッティ、メシアン、ジョリヴェ、ペンデレツキなどの創造した斬新な音響に耳を奪われる。
透明感を醸し出す和声とその思いがけない進行、微分音やグリッサンド、そして要所要所で響かせる純正調和音の深みなどはコーラスならではの味わいを持っている。
また楽音だけでなく叫び声や呟き、巻き舌や音程のない息の音など、あらゆる歌唱法の試みが駆使されているのも興味深いところだ。
まさしくエリクソンとその手兵によるこれらの演奏は、すべての合唱団の規範となるべきものであろう。
合唱音楽について何か言おうと思うなら、これを聴いていなければ発言も憚られるだろうし、どの1曲を取り上げても、その美しさだけではない、得も言われぬ説得力を強く感じる。
ライナー・ノーツは15ページで演奏曲目と録音データ、独、英語による簡易な解説付で、いくらか古いセッションになるが、リマスタリングの効果もあって音質は極めて良好。
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