2015年08月07日
フリッチャイ 1952年5月25日 シャンゼリゼ劇場に於けるフランス・デビュー・コンサートの疑似再現[SACD]
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このSACDのライナー・ノーツ表紙の右側にパリ・シャンゼリゼ劇場、1952年5月25日という表示があり、あたかもフリッチャイがパリ・デビューを飾ったセンセーショナルな凱旋コンサートのライヴ音源がリリースされたかと一瞬思わせる。
しかしケースの裏面を良く読むと、実はその夜のプログラムを同時期の同じメンバーによるセッション録音を集めて再構成したものであることが書かれている。
フリッチャイ・ファン達が早とちりをしてこのディスクを購入し、プラガにクレームをつけたためと思われるが、このサイトのページにはファンの誤解を招かないように日本語で擬似再現と大きく断り書きがしてある。
確かに擬似再現のジャケットとしては随分凝った演出だが、プラガは過去にもこの種の問題で徹底的に叩かれたレーベルなので、珍しい音源については一応疑ってみる必要がある。
しかしながらここに収録された演奏については決して羊頭狗肉的なものではなく、むしろSACD化に相応しい充実した内容を誇っていることを保証したい。
プログラムはバルトークの作品で統一されていて、新しい潮流の芸術の牙城であったパリに乗り込んでお国ものを披露したフリッチャイの自負とその実力のほどは想像に難くないが、そうしたエピソードを全く無視したとしても、この演奏は不滅の価値を持っている。
選曲とその配列にもパフォーマンス的に非の打ちどころがないほど頭脳的な配慮がなされているし、次第に収斂していくアンサンブルの一体感と、フリッチャイの高度な音響構想による眩しいほどの色彩感が刺激的だ。
『舞踏組曲』や最後の『弦楽のためのディヴェルティメント』ではスパイシーなアクセントをつけたエスニカルな躍動感が炸裂して聴き手を完全に自分達の世界に引き込んでしまう。
特に後者は弦楽合奏だけでこれだけのパワーを創造した作曲家の力量にも感嘆するが、それを凄絶を極めた集中力と音響のダイナミズムで描き出したフリッチャイには脱帽せざるを得ない。
『ピアノ協奏曲第2番』でソロを弾くゲザ・アンダもやはりハンガリーの出身で、彼のテクニックは精緻であるにも拘らず、現在ではなかなか聴けない土の薫りが立ち昇るような演奏が興味深い。
彼のブダペスト音楽院時代の師はドホナーニとコダーイで、如何に彼が同時代の自国の俊英作曲家の影響を自己の演奏に色濃く反映させていたかが納得できる。
尚オーケストラのRIAS放送交響楽団は当時としては信じられないほどの腕前を示していて、フリッチャイに鍛え抜かれた先鋭的で触れれば切れるような音色とアンサンブルの連係プレーが縦横無尽に駆使されている。
全曲モノラル録音だが、SACD化による音質向上と解像度の良さも特筆される。
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