2015年08月08日

リヒテルのシュヴェツィンゲン音楽祭からのリサイタル(1994年)


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リヒテルはその晩年までヨーロッパ各地の音楽祭に招かれて盛んな演奏活動を行ったが、会場には殆んど例外なく録音機材が持ち込まれ、彼が望むか否かに拘らずメディア化されることになった。

この音源は1994年5月15日の南ドイツ・シュヴェツィンゲン音楽祭での一晩のリサイタルを収録したもので、ロココ劇場のライヴだが客席の雑音や拍手は一切なく、当初から放送用に使う計画があったようだ。

この頃のリヒテルは聴覚に変調をきたし、コンサートでは照明を落とし楽譜を前にしながらピアノを弾くようになった。

リヒテルは聴衆の注意が演奏者ではなく、音楽そのものに向けられるように仕向けたと語っている。

当日のプログラムはグリーグの『抒情小曲集』から「感謝」「スケルツォ」「小さな妖精」「森の静けさ」の4曲、フランクの『プレリュード、コラールとフーガ』、ラヴェルの『優雅で感傷的なワルツ』及び『鏡』で、リヒテル79歳の枯淡の境地と特有の神秘的な翳に包まれた演奏を披露しているのが興味深い。

さすがにかつての覇気はなくなり表現はより静謐だが、リヒテルが円熟期になってレパートリーに取り入れたグリーグの『抒情小曲集』は大自然の営みやぬくもりを感じさせるロマンティシズムが印象的だし、フランクは沈潜した内省的な音楽に仕上がっている。

確かにラヴェルの『鏡』から「道化師の朝の歌」では往年のめくるめくようなピアニズムは望めないしテクニックの衰えも否定できないが、「蛾」や「鐘の谷」で聴かせるファンタジーは巧みなものだし『優雅で感傷的なワルツ』での哲学的とも言える骨太な構成力はリヒテルならではの仕上がりだ。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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