2015年08月09日
セルのルツェルン音楽祭ライヴ
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チェコ・フィルを振ったドヴォルザークの交響曲第8番が1969年、ルツェルン祝祭管弦楽団とのブラームスの交響曲第1番が1962年のそれぞれルツェルン音楽祭でのライヴ録音で、どちらもオリジナル・テープからのリマスタリングによる良好な音質が再現されている。
前者は楽章の切れ目ごとの聴衆の雑音や演奏終了後の歓声が入っていなければセッションと思えるほどの完璧さと、演奏中一音も聴き逃すまいとする会場に水を打ったような静けさが印象的だ。
オン・マイクで採音されているために音響がややデッドだが、それだけに細部も明瞭に聴き取ることができる。
一方後者は擬似ステレオで音場がいくらか狭く、音像も多少平面的だが当時のライヴとしては決して悪い音質ではない。
2曲ともセルの非常に厳格な指揮法によってオーケストラが統率されているが、そこから熱く迸るような音楽が流出している。
ドヴォルザークでは一音符たりとも疎かにしない誠実さと、アンサンブルの徹底した合わせの上に築いていくセルの潔癖とも言える音楽作りにチェコ・フィルがその機動力を駆使して演奏に臨んでいるのがひしひしと伝わってくる。
第2楽章ではセル一流の筋を通した抒情と牧歌的な幻想が美しく、ここではブルーノ・ベルチクのソロ・ヴァイオリンも雰囲気を盛り上げている。
終楽章の変奏でのバランスを保ちながら金管楽器を際立たせる手法は模範的で、テンポを巧みに動かして息もつかせずたたみかけるフィナーレに、応える会場のどよめきが一層感動的だ。
ブラームスに関してはこれだけ激情的な解釈もあったかと思えるほど張り詰めた緊張感と鋭い感性が漲った演奏で、第4楽章のテーマに入る前に思い切ってホルンを咆哮させている。
この部分は例えて言うならば、ベームの演奏では雲間から差し込んでくる陽光のようだが、セルのそれは今にも堰を切って一斉に流れ込む大河のようだ。
この頃のルツェルン祝祭管弦楽団は個人的な演奏技術から言えばそれほど高いレベルではなかったにしても、セルによって鍛え上げられた彼らの演奏に賭けたハイ・テンションの意気込みが感じられる。
デジパック入りでファースト・マスター・リリースのシールが貼ってあるアウディーテ・レーベルからの初出音源のひとつになる。
数葉の写真入31ページの独、英、仏語によるライナー・ノーツが挿入されている。
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