2015年08月10日

シュタルケルの1988年カザルス・ホールライヴ[DVD]


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このDVDは以前レーザー・ディスクでリリースされた1988年の東京カザルス・ホールでのライヴ映像で、バッハの『無伴奏チェロ組曲第3番ハ長調』、カサドの『無伴奏組曲』そしてコダーイの『無伴奏ソナタ』の3曲を収録している。

シュタルケルはこの時64歳だったが、その演奏はかくしゃくとして剛毅で正確無比、また一方で高度な遊び心をもみせる余裕に驚かされる。

演奏中、目は殆んど半眼に閉じて楽器も指も見ていないし、顔も無表情に近く、あたかも無我の境地にあるかのようだが、そこに燃えるような集中力が宿っていて、一人の芸術家が到達した峻厳の高みを垣間見る思いがする。

これらの作品にはチェロのあらゆるテクニックが使われていて、素人目に見ても弦を左手の親指で押さえたり、複雑な運弓など技術的な完璧さが求められることが理解できるが、総ての曲が無伴奏であるために、音楽の内側へと凝縮していく彼の凄まじいばかりの精神力を感じずにはいられない。

シュタルケルはバッハの『無伴奏チェロ組曲』全曲を生涯に4回ほど録音していて、このライヴの4年後に彼の最後の全曲録音を行っている。

勿論その度ごとに彼の解釈も変化しているので、この曲集に託したシュタルケル自身の研鑽が生涯を通して続けられたと言えるだろう。

バロック音楽にも造詣の深い彼が、それぞれの舞曲に洗練された表現を聴かせてくれるが、決して恣意的にならないところにもバッハへの確固たるポリシーが貫かれている。

3曲目はハンガリー出身の彼が、コダーイ自身から薫陶を受けた秘曲だけに独壇場の凄みと迫力を持っている。

確かにマジャール人としての誇りを持つ真に迫った演奏には違いないが、この作品もカサドの組曲も彼によって民族性を超越した普遍的な価値を持つ音楽に昇華されているところに意義があるのではないだろうか。

このコンサートが催されたカザルス・ホールは1987年にオープンした日本でも本格的な室内楽専用のコンサート・ホールで、ユルゲン・アーレントによって製作されたバロック・オルガンは世界に誇るべき楽器であるにも拘らず、2010年4月以降会場は閉鎖されて宝の持ち腐れになっている。

カザルス夫人の意志を継いだ命名だけに文化大国日本の名誉に賭けてもコンサートの再開に向けての努力が望まれる。

尚DVDはパルナッススからのリイシューになり、ライナー・ノーツもなければ録音データにも乏しいところがアメリカのレーベルらしいが、リージョン・フリーでこのライヴが復活したことは評価したい。

画像に若干の揺れが見られるが概ね良好で音質も鮮明だ。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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