2015年08月10日
フルトヴェングラー&ウィーン・フィルのワーグナー:管弦楽曲集[SACD]
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プラガ・ディジタルスでは初登場のフルトヴェングラーの第2集はワーグナーの劇場作品からのオーケストラル・ワーク集で、前回と同様ウィーン・フィルを振ったHMV音源からのSACD化になる。
第1集のリヒャルト・シュトラウス作品集が思いのほか良かったので今回も期待したが、音質的にはいくらか劣っていることは否めない。
その理由はマスター・テープの経年劣化で、さすがに1940年代のものはヒス・ノイズも少なからず聞こえるが、広めの空間で再生するのであればそれほど煩わしくはない。
むしろこの時代の録音としては良好で、LPで聴いていた時より音場の広がりと奥行きが加わり、モノラルながらしっかりした音像が得られているのはひとつの成果だろう。
またレギュラー・フォーマットのCDでは、こうした古い音源は往々にして痩せて乾涸びた響きになりがちだが、このSACDではある程度の潤いと光沢も蘇生している。
収録曲のデータを見ると『さまよえるオランダ人』序曲(1949年)、『ローエングリン』第1幕への前奏曲(54年)、『タンホイザー』序曲(52年)、『ニュルンベルクのマイスタージンガー』第1幕への前奏曲及び「徒弟たちの踊り」(49年)、『ワルキューレ』より「ワルキューレの騎行」(54年)、『神々の黄昏』より「ジークフリートのライン騎行」及び「ジークフリートの葬送の音楽」(54年)となっているので、「ワルキューレの騎行」に関しては同じメンバーによる旧録音ではなく、全曲盤からピックアップされたものと思われるが、残念ながら『トリスタン』が選曲から漏れている。
フルトヴェングラーはこの時期ウィーン・フィルの実質上の首席指揮者だったこともあり、彼らとのコンサートや録音活動を集中的に行っていてオーケストラも彼の要求に良く呼応している。
フルトヴェングラーは幸いワーグナーの楽劇のいくつかを全曲録音しているので、彼の音楽的な構想を理解するには全曲を通して鑑賞することが理想的だが、こうした部分的な管弦楽曲集でも充分にその片鱗が窺える。
例えば『オランダ人』序曲の冒頭はたいがい嵐の海の情景描写に終始してしまうが、彼のように神の怒りに触れた者の絶望感を表現し得た指揮者は数少ない。
『タンホイザー』で繰り返される巡礼のコーラスのテーマでは、筆者はかつて何故この旋律をカラヤンのようにもっとレガートに演奏しないのか疑問に思ったことがあった。
しかし後になってそれが赦されることのない罪を背負った巡礼者タンホイザーの喘ぎであり、途切れがちな息遣いと足取りを表していることに気付いて愕然とした思い出がある。
一方『マイスタージンガー』の意気揚々とした幸福感に満ちた前奏曲はこの作品の喜劇性とその晴れやかな終幕を予告しているかのようだ。
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