2015年08月11日

シェリング&ルービンシュタインのベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第9番『クロイツェル』、第5番『春』、第8番


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今から半世紀以上も前の音源なので初CD化された時にはシェリングのヴァイオリンの貧弱な音質に不満が残ったが、今回ソニー・クラシカル・オリジナルスの1枚として新しいマスタリングが施されて、音質に艶やかな広がりとスケール感が加わり、それまでの精緻だがこじんまりとした演奏のイメージが払拭され、本来あるべき音響空間に改善されたことを評価したい。

ケース裏面には22UV SUPER CDの表示があり、マスタリングのテクニックに疎い筆者には技術的な説明をする能力がないのだが、耳に聴こえてくる音質は明らかに違う。

平たく言えばSACDに一歩近付いたという印象がある。

一方彼らの演奏の質の高さでは当時から言い尽くされているとおりだ。

シェリングは巨匠ルービンシュタインの胸を借りる立場だっただろうし、実際このデュエットの主導権を握っているのはルービンシュタインの方だが、シェリングの極めて柔軟な、しかも絶妙なコントロールを効かせたボウイングは模範的だ。

この2人の演奏にはアンサンブルの喜びとともに厳格なまでの合わせ技が感じられ、その中に音楽的な洗練を極めたベートーヴェンが聴こえてくる。

例えば大曲『クロイツェル』では決してあでやかな演奏ではないにしても、内部から彼らの音楽性が湧き上がってくるような明快さと強い説得力がある。

ルービンシュタインはこの頃既に新即物主義的なスタイルを示していて、名人芸を前面に出すような伴奏はしていないが、それがここでは功を奏している。

確かにこの作品はどちらにとっても高度なテクニックを要求される難曲には違いないが、それはヴァイオリンとピアノの対決ではなく、あくまでも2つの楽器の協調性から生まれる、隙のない彫琢されたアンサンブルの究極の姿である筈だ。

ソナタ第5番『春』の第3楽章のシンコペーションを活かしたとびっきり快活でリズミカルな表現や、第8番終楽章の無窮動的な躍動感などは、彼らが如何に音楽の基本をわきまえているかの証明だろう。

ルービンシュタインはメキシコの大学でヴァイオリン教師をしていた同郷のシェリングを再び楽壇に復帰させることを強く望み、またそのための援助を惜しまなかった。

その後のシェリングのキャリアを見れば、巨匠の目に狂いはなかったわけだが、そのきっかけとなったのはルービンシュタインが彼の弾くバッハの『無伴奏』を聴いた時だったようだ。

シェリングはその後イングリット・ヘブラーとベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全集を完成させているが、より引き締まった楽想を練り上げているルービンシュタインとのセッションが、この選集のみに終わってしまったのは如何にも残念だ。

尚第9番『クロイツェル』及び第5番『春』が1958年、第8番が61年の録音で、カバー・ジャケットは初出時LPのオリジナル・デザインを採用している。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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