2015年08月17日
1950年代のシェリング、ヘンスラーからの良質音源より
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シェリングのやや硬質の音色と端正な音楽作りに加えて、1950年代の彼特有の覇気に貫かれた奏法が堪能できる1枚としてお薦めしたい。
シェリングがルービンシュタインとの歴史的邂逅を果たしたのが1954年で、それ以降シェリングはインターナショナルな演奏活動とその録音を再開することになる。
第1回目のバッハの『無伴奏ヴァイオリンソナタとパルティータ』全曲録音を行ったのが1955年で、当CDもナルディーニとヴュータンの協奏曲は同年の放送用ライヴになるので、この頃既にシェリングの飾り気を排した真摯な演奏スタイルはほぼ完成の域に達していたことが理解できる。
尚後半のラヴェルの『ツィガーヌ』及びシューマンの協奏曲は2年後の1957年のセッションで総てがモノラル録音だが、いずれも保存状態の極めて良好な音源で鮮明な音質で鑑賞できるのが幸いだ。
指揮は全曲ともハンス・ロスバウト、オーケストラはSWR放送交響楽団になる。
ラヴェルの『ツィガーヌ』に関しては個人的に他に2種類の演奏を聴いたが、どれも一長一短あって理想的なものが残されていないのが残念だ。
放送用録画のヤノープロとのピアノ伴奏版は音質がいまひとつだし、ヴァン・レモーテル、モンテカルロとのオーケストラ版は音質では最も優れているにも拘らず、オーケストラがシェリングのソロについていけないという難点がある。
一方当CDではロスバウトがSWRをしっかりまとめて高い演奏水準に引き上げているが、モノラル録音なのでラヴェルの華麗なオーケストレーションを鑑賞するには限界が感じられる。
ヴュータンの協奏曲はヴァイオリンのヴィルトゥオーシティを活かして書かれてあるが、律儀なシェリングの演奏はロマンティックな甘美さよりも構成力に優った演奏と言えるだろう。
逆にシューマンの作曲法は表面に技巧が突出するのを避けるかのように内省的だ。
しかしこうした曲種こそシェリングの得意とするレパートリーで、張り詰めた緊張感の持続が内側に向かって収斂していくような演奏が如何にも彼らしい。
ただしこの曲に関してはドラティ、ロンドン交響楽団による更に良好なステレオ録音がマーキュリーのリヴィング・プレゼンスとして復活している。
ドイツ・ヘンスラーからのヒストリカル・レコーディングのひとつだが、このシリーズは音源の質とその保存状態が概ね良好で、彼らのアーカイヴからの意外な演奏の発掘が注目される。
このCDはSWRが保管するオリジナル・テープからディジタル・リマスタリングされたもので、6ページほどのライナー・ノーツには独、英語によるシェリングの簡易なキャリアの他に録音データの詳細が記載されているのもドイツのレーベルらしい。
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