2015年08月23日
レージネヴァの「アレルヤ」〜バロック・モテット集
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レージネヴァの声質はコロラトゥーラをこなすソプラノとしては珍しくやや暗めだが落ち着いた雰囲気があり、浮き足立たずに音楽そのものを聴かせる感性が窺われる。
またどの作品に対しても常にニュートラルな姿勢で臨んでいることに彼女のテクニックの多様性が示されていると言えるだろう。
このセッションでは彼女はヴィブラートを抑えたピリオド唱法を早くもマスターしていて、指揮者ジョヴァンニ・アントニーニの要求に見事に応えている。
今回のアルバムに収められたヴィヴァルディ、ヘンデル、ポルポラ、そしてモーツァルトの作品は、まがりなりにも総て宗教曲だが、離れ技の歌唱法が求められ、しかもそこに高度な音楽性が伴わないとその真価を伝えることが難しい。
レージネヴァは明瞭な叙唱や緩徐楽章での豊かなカンタービレ、そしてそれぞれの曲の最後に置かれている「アレルヤ」では、メロディーに精緻な刺繍を施していくような装飾音の綴れ織を究極的に再現している。
彼女の持ち前の音楽性の賜物か、あるいは歌手には珍しいナイーヴな人柄からか、これ見よがしのアクロバットに聴こえないところも非常に好ましい。
カストラート歌手達が開拓したコロラトゥーラの歌唱法は、彼らの超絶技巧誇示が禍して作品の芸術性とはなんら関係のない曲芸に堕してしまったことが、既に同時代の多くの作曲家によって指摘されている。
しかし彼らのテクニックの基本に流麗なレガートを駆使したカンタービレがあったことも忘れてはならないだろう。
そのバランスを保って音楽を芸術として再現することが歌手の叡智であり、それが本来のテクニックと呼べるものである筈だ。
サハリン出身のソプラノ、ユリア・レージネヴァはその若さにも拘らず、ロッシーニのアリア集によって音楽性に溢れる薫り高い歌唱を披露してくれた。
このバロック宗教曲集及びモーツァルトの『エクスルターテ、ユビラーテ』を収録したアルバムでも無理のない伸びやかなレガートと、アジリタの技巧的な部分が互いに異質な印象を残さずに歌い上げられているのが聴きどころだ。
今回彼女を サポートする古楽アンサンブルはピリオド楽器使用のイル・ジャルディーノ・アルモニコで、当初彼らは斬新な解釈でセンセーショナルなデビューを飾ったが、彼らの身上は何よりも古楽を生き生きとして喜びに満ちた、ドラマティックな表現で聴かせるところにあると言える。
ライナー・ノーツは27ページほどで、作品解説とレージネヴァの略歴及びイル・ジャルディーノ・アルモニコのメンバー一覧表にそれぞれの使用楽器も明記され、ラテン語の全歌詞に英、仏、独語による対訳が付けられている。
尚ピッチは表示されていないが微妙に低くa'=430くらいに聞こえる。
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