2015年08月24日
アバド&ウィーン・フィルのベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」、序曲「コリオラン」
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アバドのベートーヴェンの交響曲旧全集には、彼が振る以前のウィーン・フィルでは聴くことのできなかった明るく流麗で、しかも四肢を自由に広げたような奔放とも言える表現がある。
ここではかつての名指揮者が執拗に繰り返した、ベートーヴェンの音楽の深刻さは影を潜め、どちらかと言えば楽天的な趣きさえ感じられるが、その華麗な演奏スタイルとスペクタクルなスケール感はアバドの身上とするところだろう。
特にこの第3番ではそうした彼の長所が遺憾なく発揮されている。
ライヴ特有の熱気が満ち溢れ、凄いほどの活力がみなぎっている。
しかも響きがのびやかで、この両方を満足させることができたのは、ウィーン・フィルの威力と考えてよい。
そのため冒頭から目の覚めるような鮮度があり、音が明るくつややかだ。
この美しさは言語に絶する素晴らしさであり、そこにはやさしさと緊張が交錯している。
『葬送』では辛気臭さは全く感じられず、むしろ流暢なカンタービレの横溢が特徴的だ。
また終楽章での飛翔するようなオーケストラの躍動感とウィーン・フィル特有の練り上げられた音色の美しさが、決定的にこの大曲の性格を一新している。
曲中の随所で大活躍するウィンナ・ホルンの特有の渋みを含んだ味のある響きとそのアンサンブルは他のオーケストラでは聴くことができない。
実に誠実で若々しく、このうえなく音楽的な『英雄』である。
尚カップリングは『コリオラン序曲』で、こちらも作曲家の音楽性を瑞々しく歌い上げた、しかも威風堂々たる演奏が秀逸。
どちらも1985年の録音で音質は極めて良好。
クラウディオ・アバドはウィーン・シュターツオーパーの音楽監督への就任前夜からウィーン・フィルとベートーヴェンの作品を集中的にドイツ・グラモフォンに録音している。
カップリングはライヴの交響曲を中心に、余白を序曲等で満たした6枚の個別のCDとそれらをまとめたセット物もリリースされたが、このシリーズはアバドの80歳誕生記念として先般日本で復活したものだ。
彼はその後ベルリン・フィルと映像付の再録音を果たし、現在ではそちらの方が良く知られているし、先頃出された41枚組の箱物『ザ・シンフォニー・エディション』でも第2回目の全集がリイシューされている。
一方ウィーン・フィルとの旧全集については外盤は既に製造中止で、交響曲のみを5枚のCDにまとめたユニヴァーサル・イタリー盤も入手困難になっているという事情もあり、今回の復活はアバド・ファンには朗報に違いない。
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