2015年08月26日
ミュンシュ&ボストン響のフランク:交響曲ニ短調&デュカス:魔法使いの弟子、他
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シャルル・ミュンシュがボストン交響楽団と1956年から62年にかけて行った、フランス系の作品を集めたセッションで、このCDはRCAのレッド・シールからBlu-spec-CD仕様としてリイシューされたものになる。
この時代の録音としては優秀だった旧盤との音質の違いはわずかだが、鮮明さではこちらが若干優っている。
いずれにしてもアナログ音源特有のテープ・ヒス及び数ヶ所に点のようなノイズが多少残っているのも事実だ。
ここに収められた4曲の中ではフランクの交響詩『呪われた狩人』が最も録音状態が良く、彼らの得意とする絵画的な情景描写とデモーニッシュな表現が力強く示された演奏だ。
勿論それはデュカスの『魔法使いの弟子』にも言えることで、幅広くうねるようなダイナミズムを駆使したボストン交響楽団の力量を余すところなく聴かせている。
この曲ではオーケストラの音像自体はコンパクトだがバランスが良く、そのために奥行きが感じられスペクタクルな曲想が良く捉えられている。
またイベールの『寄港地』での茫洋とした海原をイメージさせる第1曲や、続く第2曲の異国情緒の表出も流石で、このCDでは最も古い録音であるにも拘らずマスターの保存状態も極めて良好だ。
当時のボストン響の充実度を裏付ける豊麗な響き、現在は失われてしまったフランス的な特質を堪能できる。
一方フランクのもう1曲『交響曲ニ短調』はミュンシュ&ボストン響の最高傑作の1つ。
ベルギー人だったフランクは、構成感や重厚さを重視するドイツ的な作風を持ち、その意味でミュンシュの音楽性にぴったりの作曲家だった。
彼は1945年=パリ音楽院管弦楽団、1957年=ボストン響(当盤)、そして1966年=ロッテルダム・フィルと3種類の録音を残しており、ミュンシュによる同一曲録音回数記録では、「幻想」の5回、ラヴェル「亡き王女のためのパヴァーヌ」「ボレロ」「ラ・ヴァルス」「スペイン狂詩曲」の4回に次ぎ多い。
この交響曲にフルトヴェングラーやメンゲルベルク、ザンデルリンクなど、ドイツ系の指揮者の名演が多いのもそのためであり、むしろ生粋のフランス人指揮者の演奏には不満が残ることが多い。
その意味でミュンシュの解釈は理想的。
豪快な力強さ、緊張感が漲りながらも、どこまでも開放的な情熱が横溢しておりドイツ的な構成感とフランス的な色彩を合わせ持ったフランクの本質に相応しい名演である。
ミュンシュらしい色彩感に溢れる濃厚な情緒を持っているが、この曲の内省的な面よりはむしろオーケストレーションの華麗さを前面に出した解釈で、その意味ではこの作品に内在するエネルギーを外側に向けて引き出した、より感覚的な演奏の最右翼たるセッションだろう。
全体的に屈託のないラテン的な雰囲気があり、フランクの音楽に哲学的な深みや渋みを求める方は意見が分かれるところかも知れない。
音質的に言うと、当時の技術的な問題だと思うが、音場は広いが金管楽器が咆哮する部分では生の音が拾われて空気管に乏しい平面的な音響になってしまう弱点がある。
尚この曲集は更に高音質化されたXRCDバージョンでもリリースされている。
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