2015年08月27日
フレーのバッハ&ブーレーズ:ピアノ作品集
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ダヴィッド・フレーのヴァージン・クラシックスへのデビュー・アルバムで、新旧両作曲家の作品を交互に並べたカップリングはこれまでに余り例がないが、何事もないかのように続けられる演奏が彼のこだわりのない広い音楽観を良く表している。
しかもバッハとブーレーズの間にそれほど違和感を感じさせないのは、フレーの一貫した音楽性によって全曲が統一されているからだろう。
本盤におけるフレーの演奏はウェットで軽やかな詩情と洗練された音響に満たされている。
バッハの作品では明るく開放的なフレーズが、軽やかな詩情に乗せて歌われるが、一面サラバンドのような緩徐楽章ではウェットでいくらか耽美的な雰囲気を醸し出している。
いずれにせよフレーの演奏は総てが彼なりに完璧に料理されていて、その特徴はバッハに関しては最低限バロック的なルールを守りながら、対位法の旋律に溢れんばかりの感性を託して歌っていることだろう。
バッハの鍵盤楽曲の中では最も自由な発想で書かれた『パルティータ第4番』では、そうした可能性が最大限発揮されている。
彼が最近リリースしたCDも2曲の『パルティータ』であり、こうした選曲は決して偶然とは思えない。
一方ブーレーズの2曲は彼が作曲家自身から演奏についての助言を受けたもので、こちらにもフレーの表現上のエッセンスがそれぞれの曲に良く反映され、洗練された透明な音響を作り出している。
それは決して奇をてらった押し付けがましい解釈ではなく、自然に聴き手を自分の方に誘導するすべも知っているようだ。
若手だが既に演奏表現に対するしっかりしたポリシーを持っていて、しかも大らかで無理のない表現力とレパートリーを限定してじっくり取り組む姿勢から、将来を期待できるピアニストの1人であることが窺われる。
同世代のドイツの若手、マーティン・シュタットフェルトとは全く違うタイプのユニークな存在として評価したい。
尚これからこのCDを購入したい方は、バッハのピアノ協奏曲集とセットになってプライス・ダウンされた2枚組の方をお薦めする。
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