2015年08月29日

カイルベルトのワーグナー:歌劇「ローエングリン」(1953年バイロイト・ライヴ)


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ヴォルフガング・ヴィントガッセンは、第2次大戦後のワーグナー・テノールの第一人者で、残されたレコードも大部分ワーグナー。

若々しい声質と風貌のヘルデンテノールで、第2次大戦後最高の爛蹇璽┘鵐哀螢鶚瓩塙發評価された。

ヴィントガッセンの「ローエングリン」の演奏記録は、バイロイト音楽祭に於ける1953年度のカイルベルト盤、翌年のヨッフム盤が残されているが、演奏はいずれ劣らぬ名演。

2種のうち、前者は当時の英デッカのスタッフによる録音なので、モノラル・ライヴとしては最高に素晴らしい録音水準を誇っているのが有難い。

ただしエルザは53年のスティーバーも悪くないが、54年度のニルソンの方が上なので、甲乙つけ難い。

ヴィントガッセンは、バイロイトで最初の2年間は、パルジファルと「ラインの黄金」のフローを歌い、3年目の1953年にはパルジファルをラモン・ヴィナイとダブル・キャストで歌ったほか、新たにローエングリンとジークフリートも歌って、とくにローエングリンで絶賛され、バイロイトでの名声を確立した。

オペラ評論家とした大をなしたアンドルー・ポーターは、当時編集同人をつとめていた英国の『オペラ』誌にこう書いて送った。

「ローエングリンのヴォルフガング・ヴィントガッセンは、ほぼ間違いなく現在の舞台では最高のワーグナー・テノールであろう。ジークフリートの役ではまだ声のスタミナがイマイチだが(ほかの点ではほとんど申し分がないのだが)、彼のローエングリンは力強くノーブルで、甘美でもあり、また叙情味も豊かであった」

本盤の演奏を聴くと、ヴィントガッセンは、ワーグナーを歌って名声があったヘルデンテノールのなかでは声の質がやや細く軽いほうで、とりわけスタミナと劇的な表現力が必要とされるパルジファル、ジークムントなどよりもドイツ語ではユーゲントリヒャー(若々しい)・ヘルデンテノールと呼ばれているリリコ・スピント寄りのローエングリンや「オランダ人」のエリック、「マイスタージンガー」のヴァルターなどにいっそう適していたことがわかる。

前述のポーターも言うように声質もうってつけだし、風貌も役どころにふさわしく、戦後最高のローエングリンだったと思う。

そしてどこまでもドイツ音楽の伝統に根をおき、ドイツ民族の美学を最良の形で示した重鎮カイルベルトの音楽性が過不足なく聴取できると言えよう。

ローエングリンのヴォルフガング・ヴィントガッセン、エルザのエレノア・スティーバー、オルトルートのアストリッド・ヴァルナイ、テルムラントのヘルマン・ウーデ、ハインリヒのヨーゼフ・グラインドルといったエルザのスティーバーを除くと当時のバイロイト常連たちを中心に、カイルベルトが全体をがっちりとまとめあげた演奏だ。

少し前の名歌手たちを巧みに統率しながら、カイルベルトがつくりあげる音楽はオーソドックスで、底力がある。

いかにもドイツの伝統に深く根をおろしているという性格で、すべての要素が安定感をもち、危うさがない。

素朴といえば素朴な性格なのだけれど、このロマンティック・オペラを、ごく自然なスタンスで再現し、そこにはこのオペラ独特の持ち味がよく導き出されており、何も不足はない。

虚飾めいたものはなく、在るがままを素直にまとめた名演と言えよう。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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