2015年08月31日
ポリーニ&アバドのコンプリート・ボックス
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ここ数ヶ月クラウディオ・アバドの追悼盤が目白押しにリリースされているが、ソリストを迎えた協演盤としてはこのセットが先般のアルゲリッチとの5枚組に続く、ポリーニとのグラモフォンへのコンプリート録音集になる。
本BOXに収められたそれぞれの演奏については、既に当ブログでもレビューを書いたものばかりで、既に語り尽くされた感のある名盤の集成である(それ故筆者はこのセットを購入していないことを予めお断りしておく)。
ベートーヴェンのピアノ協奏曲に関しては、ポリーニにはベーム、ウィーン・フィルとの第3、第4、第5番とベームの死後ヨッフムが第1、第2番を補った旧全集が存在するし、ブラームスも第1番はベームの振ったセッションが聴き逃せない。
ベームはポリーニ、ウィーン・フィルとこれらの協奏曲集を完成させる願望があったに違いないが、奇しくもそれはアバド、ベルリン・フィルによって実現された。
同じイタリア人同士でもアバドとポリーニは、ジュリーニとミケランジェリのような関係ではなく相性が極めて良かったことから、彼らのコラボを一層堅固なものにしている。
録音では常にマイペースの姿勢を崩さなかったポリーニが、彼とCD8枚分の協演を残しているのは殆んど例外的と言えるだろう。
一方ベルリン・フィルはアバドを首席指揮者に迎えてからオーケストラのカラーも一新された。
カラヤン時代に練り上げられた絢爛豪華な響きはアバドによって一度解体され、より自発的で風通しの良い軽快なものになった。
帝王と呼ばれたカラヤンの呪縛から解き放たれたと言ったらカラヤン・ファンからお叱りを受けるかも知れないが、アバドがベルリン・フィルに新風を吹き込んだことは間違いない。
彼らの協演は1969年にプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番で始まって以来、現代物を得意とした2人だけに、多くの20世紀の音楽を採り上げたが、残念ながらプロコフィエフは録音として残されていないようだ。
一流どころのピアニストでも売れ筋のポピュラーな曲目ばかりを録音する傾向にあって、幸いこのセットはシェーンベルク、バルトーク、ノーノの都合4曲が入っている。
新時代の音楽を率先して採り上げ、常に高い水準の演奏を心掛けた彼らの啓蒙的な活動には敬服せざるを得ない。
バルトークについては当然彼らの解釈は民族主義的ではない。
だからハンガリー特有の舞踏やその音楽語法から生み出される原初的パワーを期待することはできないが、シカゴ交響楽団と共に斬新な音響を創造しながらオリジナリティーに富んだ解釈を示した録音に価値が認められるのではないだろうか。
こうした作品群では彼らの怜悧なアプローチが傑出していて音楽に全く隙が無い。
中でもノーノの作品『力と光の波のように』はアバドとポリーニのために制作された1972年の新作で、電子音とソプラノ、ピアノ、オーケストラを組み合わせた凄まじいばかりのサウンドとヴァーチャルだが目を眩ませるような強烈な光線さえ感じられ、ノーノのイデオロギーの世界を象徴している、一度は聴いておきたい作品だ。
ベートーヴェンではライヴから採られた5曲の協奏曲の他に交響曲第9番の終楽章をイメージさせる独唱陣と混声合唱が加わる『合唱幻想曲』も組み込まれている。
現在では稀にしか演奏されない曲だが、第9に収斂していく楽想の準備段階が興味深い。
ブラームスのピアノ協奏曲第2番は1976年のウィーン・フィル及び95年のベルリン・フィルとの2種類が収録されている。
シューマンの協奏曲と並んで深く彫琢されたポリーニの圧倒的なピアニズムが聴きどころだ。
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