2015年09月04日
アバド&モーツァルト管弦楽団 イン・マドリード
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2014年1月20日に亡くなった巨匠クラウディオ・アバドが、2013年3月にマドリードで行った演奏会から、モーツァルトのオーボエ協奏曲とハイドンの協奏交響曲がディスク化。
常に音楽に真摯に向き合い、明晰でバランスの良い演奏を目指して最善をつくすアバドの指揮は、そのどれもが素晴らしく、協奏曲では独奏者とオーケストラの演奏をコントロールするだけでなく、最良の形で音楽が表現されるように心がけおり、その姿勢は晩年も一切変わることはなかったと言える。
クラウディオ・アバドは晩年手兵のモーツァルト管弦楽団を率いて、ドイツ・グラモフォンからモーツァルトの器楽作品を体系的にリリースし始めた。
特に管楽器のための協奏曲では全曲録音を構想していたようだが、残念ながらそれは彼の死によって達成されなかった。
残された曲はフルート協奏曲第1番ト長調及びオーボエ協奏曲ハ長調の僅か2曲だったが、後者は既に同じメンバーで録音されていた。
それがここに収録された音源で、何故かスイス・クラヴェスからのリリースになる。
録音は2013年3月にスペインのサラゴサとマドリードで行われたもので、ライヴだがこれまでどおり客席からの雑音や拍手は一切なく、また音質も極めて鮮明でグラモフォン盤に優るとも劣らない。
尚カップリングはヴァイオリン、チェロ、オーボエとファゴットが加わるハイドンの協奏交響曲変ロ長調で、こちらもアバド晩年の境地を示した、シンプルな中にも繊細で豊かな音楽性に彩られた演奏が素晴らしい。
アバドは後進の育成にも余念がなかった。
ヨーロッパの各地に新しいオーケストラを創設し、優れた新人に演奏の機会を与え、彼らの才能を伸ばし演奏家として世に送り出すことを自身の仕事の一部として自覚していたようだ。
スペイン人のオーボエ奏者ルーカス・マルシアス・ナバッロもその1人で、個性派ではないがしっかりした音楽性と精緻で揺るぎないテクニックを備えている。
急速楽章で聴かせる鮮やかなヴィルトゥオジティにも幅広いダイナミズムが駆使されているし、第2楽章アダージョ・マ・ノン・トロッポではモーツァルトが書いた恒久的な安らぎを感じさせるカンタービレが極めて美しい。
アバドの指揮はオーケストラから重厚な響きを避けて、軽快で透明感のある音色にきめ細かい指示を徹底させた、この時期特有の彼の哲学が反映されている。
一方ハイドンの協奏交響曲ではフレッシュで息の合ったアンサンブルが傑出している。
ソリストはナバッロの他にヴァイオリンのグレゴリー・アース、チェロのコンスタンティン・プフィッツそしてファゴットのギヨーム・サンターナが受け持っているが、彼らはそれぞれがアバドの薫陶を受けたモーツァルト管弦楽団の首席奏者であり、オーケストラの質の高さを示している。
モーツァルト管弦楽団はアバドが2004年に創設した若い演奏家を集めて創設したオーケストラ。
アバドと2011年8月よりモーツァルトの管楽協奏曲の演奏会&ライヴ録音を行ってきたが、この演奏会でもアバドが絶大なる信頼を寄せていた若手実力派をソリストに起用し、新鮮さ溌剌さをもった演奏を披露。
アバドに見出された若手演奏者たちが全身全霊をこめて演奏した、アバドの忘れ形見的な記念碑的ライヴ録音と言えるだろう。
3面折りたたみデジパック入りで、31ページほどの仏、独、英語による綴じ込みライナー・ノーツ付。
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