2015年09月06日
モラゲス&プラジャークSQのモーツァルト&ウェーバー:クラリネット五重奏曲、他
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本盤に収録されているモーツァルトの音源は同じくプラガ・ディジタルスのSACDシリーズでも既にリリースされていたもので、それにウェーバーのクラリネット五重奏曲を加えてレギュラー盤CDとしてリイシューされた。
元々2001年から2003年にかけてのDSD方式によるスタジオ録音であるために音質が極めて良好で、SACDではないが高度な鑑賞にも充分堪え得るものだ。
フランスのクラリネッティストの第一人者でパリ管弦楽団の首席奏者としても知られ、またモラゲス木管五重奏団のメンバーでもあるパスカル・モラゲスは、それまでのフランス人管楽器奏者のオープンで官能的な音色とはやや趣を異にするドイツ系のしっかりした音作りを学んでいるが、音楽的な創意やフレーズ感には紛れもなくフランスの伝統的な奏法が滲み出ていて、この曲集でも彼の洗練されたセンスがモーツァルトやウェーバーにも活かされている。
モーツァルトのピアノ、クラリネットとヴィオラのための三重奏曲変ホ長調『ケーゲルシュタット・トリオ』K.498は、当時クラリネットの名手で友人でもあったアントン・シュタットラーの演奏を前提に作曲されたようだが、作曲技法は既に完成していて、僅か1日で書き上げた作品とは信じ難い、三者が緊密に織り成すアンサンブルが聴きどころだ。
ピアノ・パートはパリ音楽院出身でモラゲスとは旧知の仲でもあるフランク・ブラレーが受け持って、トリオの要を抑えている一方で、作曲家メンデルスゾーンの末裔のヴィオラ奏者ヴラディミル・メンデルスゾーンのヴィオラがこの曲を一層精彩に富んだものにしている。
続くクラリネット五重奏曲イ長調K.581の協演はプラジャーク弦楽四重奏団で、弦の国チェコのアンサンブルに相応しく瑞々しいしなやかな音色が生き生きとした彼らの音楽に反映されている。
また弦楽部に支えられたモラゲスのソフトなソロが印象的で、やはりドイツ系の奏者とは一線を画した陰翳に富んだカラフルな表現が美しいし、イン・テンポで媚びるようなところはないが、シンプルな情緒の中に醸し出される幸福感が秀逸だ。
最後のウェーバーのクラリネット五重奏曲変ロ長調は、事実上クラリネットのための小編成の協奏曲といった書法で、非常に器用に書かれているがアンサンブルとしての妙味よりもソロの名人芸を前面に出した小気味良さが特徴で、中でも終楽章ロンド、アレグロ・ジョコーソでのモラゲスの鮮やかなフィナーレは爽快だ。
パスカル・モラゲスがこれまでに録音したレパートリーはアンサンブル作品が大半で、またそのジャンルでの能力が高く評価されているので、彼のユニークな解釈によるこうした作品集は聴き逃せないが、ソナタや協奏曲なども是非聴いてみたい興味深い演奏家の1人だ。
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