2015年09月08日
ヴァルヒャのブクステフーデ:オルガン作品集
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ヘルムート・ヴァルヒャがJ.S.バッハ以外の作曲家の作品を録音することは例外中の例外だったが、幸い彼は引退前にブクステフーデを中心とする『バッハ以前のオルガン音楽の巨匠』というタイトルの8人の作曲家による24曲の作品集を録音している。
これはアルヒーフから3枚組CDでリイシューされたが、その中から北ドイツのオルガン音楽のパイオニアとしてバッハにも大きな影響を及ぼしたディートリヒ・ブクステフーデ(1637-1707)の作品11曲を独立させたのがこの演奏集になる。
現在ではいずれも製造中止になってしまったがMP3フォーマットであればこの1枚分は入手可能だ。
ブクステフーデの作品はバッハのようなオルガン音楽の小宇宙を形成するような規模と堅牢な構成は持っていないにしても、若いバッハを感動させただけあって、斬新な音響と自由な発想に魅力がある。
だからブクステフーデの音楽が後のバッハの作品をイメージさせるとしても不思議ではないだろう。
ヴァルヒャの解釈は基本的にバッハの鍵盤音楽に対する姿勢と全く同様で、音楽の構造を明らかにするために最大の努力が払われ、それを妨げるようなエレメントの混入は一切避けている。
故意にテンポを揺らしたり、むやみに音量を水増ししたりは決してしないが、彼が生涯に亘って明かさなかったと言われるレジスターの組み合わせは最も効果的かつ巧妙に考え抜かれている。
楽譜を髣髴とさせるような真摯な演奏でありながら、そこに突き進むような情熱と弛まない緊張感が常に感じられる。
ヴァルヒャがこの作品集のために選んだ楽器は、バロックの名匠アルプ・シュニットガーによる1680年製作の大オルガンで、歴史的な変遷の後にマインツ近郊の小村カッペルの聖ペトリ・ウント・パウリ教会に設置されたものだ。
ヴァルヒャはこのオルガンに愛着を持っていたようで、第1回目のバッハ・オルガン作品全集を録音した時にもこの楽器を弾いている。
録音は1977年に行われ、これがヴァルヒャの最後のセッションになった。
音質は極めて良好。
弱冠20歳のバッハが、オルガニストとして勤務していたアルンシュタットからブクステフーデのオルガン演奏を聴くために、400キロの道のりを徒歩でリューベックに向かったエピソードは良く知られたところだ。
この話には4週間の休暇を無断で3ケ月に延長して当地に滞在したことや、ブクステフーデの後任として聖マリエン教会オルガニストの地位を受け継ぐチャンスが与えられたものの、その条件は作曲家の行き遅れた長女との縁組が必須で、契約はまとまらなかったというオチが付いている。
その上アルンシュタットに帰った後のバッハは、当局から彼のオルガンが奇異な響きになったというクレームを受けることになるのだが、それだけ青年バッハがこの大家から受けた影響は絶大だったに違いない。
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