2015年09月08日
ジャン・マルティノンの遺産(DG盤)
この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。
このセットの魅力は、ジャン・マルティノンがドイツ・グラモフォンに残したCD3枚分の全音源が網羅されていることである。
ピエール・フルニエをソロに迎えたラロとサン=サーンスのチェロ協奏曲及びブルッフの『コル・ニドライ』をコンセール・ラムルーと、そしてスペインのハープ奏者ニカノル・サバレータとのサン=サーンス、タイユフェル、ヒナステラのハープ協奏曲がフランス国立放送管弦楽団との協演で収録されている。
フルニエの筋の通った手堅い奏法から引き出される凛々しいチェロを支えるマルティノンのラムルーへの克明な采配も秀逸だが、一方知的で精緻なサバレータのハープ・ソロを浮かび上がらせるヒナステラの協奏曲では、オーケストラから極彩色とも言える音響空間を創造していて、彼の同時代の音楽への造詣の深さに驚かされる。
いずれも当時のフランスのオーケストラ特有の音色と奏法を堪能できるのも興味深い。
やや薄手で低音部も軽い弦楽部、しなやかで明るい管楽器群、そして軽妙洒脱なパーカッションを絶妙なバランスでまとめあげるマルティノンの指揮法は現在聴くことが殆んど望めない独特の空気感を醸し出している。
もうひとつのセールス・ポイントはマルティノンの作曲家としてのプロフィールで、CD4には彼自身の手になるヴァイオリン協奏曲第2番が収録されている。
ただしこの演奏に彼は参加しておらず、シェリングのソロ、クーベリック指揮、バイエルン放送交響楽団とのセッション録音を収めている。
無調作品だが華麗なオーケストレーションとダブル・ストップを多用してソロを歌わせる作法には、ヴァイオリニストでもあったマルティノンの面目躍如たるものがある。
クーベリックの創り上げるスペクタクルなオーケストラを背景に、シェリングがクリスタリックな硬質の音色を駆使してクールな情熱を傾けたソロが冴え渡る秀演だ。
来年がジャン・マルティノンの没後40周年に当たり、幾つかのレーベルからまとまったセット物がバジェット価格でリリース予定だが、オーストラリア・エロクエンスからはフィリップス・レガシー3枚とこのグラモフォン・レガシー4枚が既に入手可能だ。
ふたつの録音を聴き比べてみると、フィリップスがやや年代が古く総てがモノラル録音であるのに対して、グラモフォンの方は1960年から71年にかけての良質なステレオ録音であるため、どちらを選ぶかと言われれば先ずこちらの鑑賞をお薦めしたい。
ただ双方の演奏曲目にはだぶりがないのでコレクターにとってはいずれも貴重なサンプルに違いない。
特にリマスタリングの記載はないが、当時のグラモフォンの録音技術の特徴でもある鮮明だが骨太でバランスの良い音質が再現されている。
またCD3アルベルト・ヒナステラのハープ協奏曲は初CD化というボーナス付だ。
オーソドックスなジュエルケースに入った廉価盤ながら、8ページの英語によるライナー・ノーツ付。
ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング
フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室。