2015年09月13日
ベームによるR.シュトラウスのオペラ4曲
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メンブラン/ドキュメンツからリヒャルト・シュトラウス生誕150周年記念としてリリースされたセット物のひとつで、カール・ベーム指揮の『ばらの騎士』『無口な女』『アラベラ』『カプリッチョ』の全曲録音を10枚のCDに収録している。
1958年の『ばらの騎士』のみがシュターツカペレ・ドレスデンとの演奏で、このセットの中では唯一セッションのまがりなりにもステレオ録音なのだが、オーケストラが右側後方に偏りぎみなため声楽とのバランスがいまひとつで、LPから直接起こしたようなカートリッジの共振にも似たノイズを伴っているのが惜しまれる。
それ以外の演目はある程度会場の雑音が混入したモノラル・ライヴになるので音質的には曲によってかなりばらつきがあるが、どの作品もウィーン・フィルとの協演でそれぞれの歌手達も高い水準の歌唱を披露している歴史的上演の貴重な記録なので、この価格であればベーム・ファンには欠かせないコレクションになるだろう。
『ばらの騎士』はシェヒ、ゼーフリート、シュトライヒやフィッシャー=ディースカウを配した瑞々しい歌唱が倦怠やデカダンスを殆んど感じさせない健やかさに特徴があるが、例えば第2幕の幕切れのオックス男爵のワルツなどにベームらしいさりげないウィーン趣味が滲み出た演奏が美しい。
ベームは同オペラを1969年にウィーン・フィルとのライヴで残しているが、どちらも既に廃盤の憂き目に遭っているので今回の廉価盤での復活は歓迎したい。
このセッションが行われたドレスデンはR.シュトラウスのオペラ上演が盛んな都市だけあって『ばらの騎士』の他にも『アラベラ』『無口な女』は当地初演の作品で、特に『無口な女』は1935年にベームの指揮によって初演を飾っている。
このセットに収められている1959年のザルツブルク音楽祭ライヴは音質も良好で、ギューデン、ヴンダーリヒ、プライ、ホッターなど当時のオール・スター・キャストが組まれていて傑出した喜劇に仕上がっているのだが、ベーム自身によるカット版が使用されていて演奏時間がオリジナル・スコアに比較するとかなり短縮されているのも事実だ。
R.シュトラウスの薫陶を受けたベームなので、舞台上の効果を考慮した作曲家承認済みのカットだったことが想像されるが、彼はその後もこのオペラの上演には常にカット版を使ったようだ。
ちなみに『アラベラ』は1947年のザルツブルクにおけるライヴ、また『カプリッチョ』は1960年のウィーン・ライヴになる。
完全節約企画のためライナー・ノーツや歌詞対訳等は一切省略されていて、ボックスもごく実用的で洒落っ気のないデザインと装丁になっている。
アニヴァーサリー・エディションとしてメンブランからは同時にオーケストラル・ワークを中心とする10枚組もリリースされているが、いずれもリマスタリングがされていないので音質を問うか否かで選択肢が分かれるかも知れない。
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