2022年07月02日
モーツァルトの手紙 下―その生涯のロマン
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モーツァルト書簡集下巻は彼が最後の数年を生きたウィーンでの生活を中心に、膨れ上がる借金に苛まれながらも次々に傑作を生み出していく精力的な作曲活動、そして遂に力尽きて亡くなる50日前までの彼の行動と心情がありのままに吐露されている。
モーツァルトは妻に限りない愛情を注いだ作曲家だった。
彼は湯治のためにバーデンに滞在するコンスタンツェ宛に頻繁に手紙を書き、借金だらけになっても彼女には滞りなく送金を続け、常に体を気遣っている。
その甲斐もあってコンスタンツェは病から快復するが、皮肉にもその前にモーツァルトは亡くなってしまう。
困窮の生活の中で彼が澄み切った青空のように屈託のない作品を作曲し続けることができたのは驚異でしかない。
手紙の中に居酒屋で独りで食事をすることの惨めさも書かれている。
彼は作曲する時以外は誰かが傍らに居てくれないと堪えられない寂しがりやだった一面も興味深い。
最後の年譜で訳者は『モーツァルトは35年10ヶ月9日間生存し、そのうち10年2ヶ月8日間を旅の空で過ごした』と記している。
人生のほぼ1/3を彼はヨーロッパ諸都市でのコンサート、オペラ上演やそれに伴う移動のために費やしたことになる。
筆者は以前ザルツブルクとウィーンでモーツァルトの住んだ3軒の家を訪れたことがある。
現在ではいずれも記念館になっていて、彼に因んださまざまな展示物を見学することができるが、ある一室で彼が生涯に書いた総てのスコアを一列に積み上げてあった光景が思い出される。
それはその部屋の天井まで届くほどの高さがあり、彼が如何に離れ技的な作曲活動をしていたかを証明している。
平均するとモーツァルトは生涯を通じて1日6ページのフル・スコアを毎日書き続けたことになるそうだが、この書簡集でも明らかにされているように度重なる演奏旅行とその準備、生活のための生徒へのレッスンやあらゆる雑事に煩わされていたことを考えれば、今日私達が名曲として鑑賞している作品群が到底信じられないようなスピードで作曲されていたことになる。
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