2015年09月15日
クリュイタンスのグノー:歌劇「ファウスト」
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EMIのミドル・プライスによるオペラ・シリーズの1組で、クリュイタンスの全盛期1958年にパリ・オペラ座管弦楽団及び合唱団を率いてのセッションは歴としたステレオ録音だが、この音源は1989年にデジタル・リマスタリングされ音質も充分満足のいくものになっている。
この演奏ではクリュイタンスのリリシズムが抜きん出ていて、グノーの音楽的な趣味を溢れんばかりに伝えている。
グノーはゲーテの原作の精神性とは裏腹の声と視覚に訴える、華麗で映像的なオペラに作曲しているのだが、その色彩感やドラマ性の魅力を余すところなく引き出して、堂々たるグランド・オペラに仕上げたクリュイタンスの力量を高く評価したい。
歌手では主役級の4人の活躍が聴きどころで、この時期ならではのキャスティングによる名歌手達の饗宴を堪能できるのも大きな魅力になっている。
またパリ・オペラ座管弦楽団は、劇場のオーケストラらしく融通の利いたサポートとカラフルでダイナミックな音響も特筆される。
ニコライ・ゲッダの歌うタイトル・ロールには若返ったファウストの颯爽とした高貴さが良く表れている。
第3幕のアリア「清らかな住まい」の抒情と苦もなく聴かせるハイCはこの場の醍醐味のひとつだ。
筆者は過去に1度だけゲッダのリサイタルを聴く機会に恵まれたが、その美声だけでなく他国語を母国語のように操る並外れた才能と長身で舞台映えのする容姿が印象に残っている。
メフィストフェレスを演じるボリス・クリストフによる第2幕の「金の子牛の歌」と第4幕の「眠ったふりをせずに聞きたまえ」はアクの強い強引とも思える歌い回しだが、シャリアピンを髣髴とさせる徹底した舞台役者としての演技が感じられる。
彼はクリュイタンスとムソルグスキーの『ボリス・ゴドノフ』も録音しているので、同シリーズでの復活も望みたい。
一方デ・ロス・アンへレスの清楚なマルグリートも得がたい当たり役だと思う。
第3幕の「昔トゥーレに王ありき」に始まる「宝石の歌」のシーンを、世間知らずの純粋さと仄かな甘美さで表現し切っている。
また出番は短いがマルグリートの兄ヴァランタン役のバリトン、エルネスト・ブランは第2幕のカヴァティーナ「この土地を離れる前に」で若々しく誠実な役柄を歌い上げていて、これもこのオペラの名唱に数えられるだろう。
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