2015年09月16日
ヒラリー・ハーン&パーヴォ・ヤルヴィのモーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第5番/ヴュータン:ヴァイオリン協奏曲第4番
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ヒラリー・ハーンの新譜は2曲のヴァイオリン協奏曲、モーツァルトの第5番イ長調『トルコ風』とヴュータンの第4番ニ短調のカップリングで、パーヴォ・ヤルヴィ指揮、ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメンとの協演になる。
いずれの演奏でもハーンはとびっきりシックな音色を武器にしながらも、聴き手に媚びることのない、丁寧に弾き込んだ知性的な爽やかさに先ず惹き込まれる。
それが彼女がこれまでに培った奏法なのだろうが、テクニックのアピールなどには興味を示さず、音楽に真摯に対峙して曲想を可能な限りすっきりとまとめた、ややクールだが流麗で飽きの来ない演奏だ。
モーツァルトではオーケストラが小編成で、指揮者が弦楽部にヴィブラートを抑えたピリオド奏法を取らせているために、曲のスケールがよりコンパクトに聞こえる。
しかしこうした古典的で等身大の再現がかえってソロを際立たせている。
近年のパーヴォ・ヤルヴィのモーツァルトへの解釈と言えるだろう。
第2楽章のカンタービレもハーンは良く歌っているが、常に節度をわきまえ様式を崩さない。
この曲は終楽章メヌエットに挟まれてトルコ風のマーチが挿入されているために『トルコ風』のニックネームで呼ばれているが、ハーンのソロ・ヴァイオリンに導かれるエネルギッシュで鮮やかな曲想の変化とメヌエットのテーマが再現される際の品の良さも聴きどころのひとつだ。
尚それぞれの楽章を飾るカデンツァは総てヨーゼフ・ヨアヒムの手になる。
自身ヴァイオリニストだったヴュータンの協奏曲は随所に華麗な技巧がちりばめられた典型的なロマン派の作品だが、オーケストラもかなり充実した聴かせどころを持っているので単に名人芸を発揮するだけのレパートリーではない。
ハーンは必要以上に走らず、むしろテンポを中庸に取って曲中の完璧な秩序と構成美の中に物語性を見出している。
濃厚な表現や派手なヴィルトゥオジティを求める人にとってはいくらか淡白に聴こえるかも知れないが、これが彼女の高踏的ロマンティシズムの美学とも言えるだろう。
第3楽章スケルツォもスリリングな演奏と言うより、堅実なボウイングから紡ぎだされる極めて音楽的な趣を持った演奏で、第4楽章に受け渡す非常に魅力的な部分だ。
終楽章は第1楽章の冒頭のモチーフが回帰するオリジナル・ヴァージョンを採用している。
録音はモーツァルトが2012年、ヴュータンが2013年で、30ページほどのライナー・ノーツに英、独、仏語による簡単な解説と幾つかのスナップ写真が掲載されている。
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