2022年04月20日
巨匠アラウのリスト集成、内容よりも技巧誇示の音楽という印象を完全に払拭し、高い音楽性と本来のテクニックが示された騎士道的ロマンティシズム
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フィリップス音源のアラウのリスト・レパートリーを6枚のCDにまとめたエロクエンスからのリイシューになり、ネット配信でも聴くことができる。
尚、CDであれば演奏曲目一覧が印刷されたリーフレットだけがついた簡易な廉価盤になる。
リスト直系の弟子を自負していた彼だけに、作曲家の芸術的高みとアラウ独自のオリジナリティーが相俟って、他のピアニストとは常に一線を画した解釈を示している。
それはリストの作品に往々にしてつきまとう内容よりも技巧誇示の音楽という印象を完全に払拭した、高い音楽性と本来のテクニックが示されているのが特徴である。
リストを敬遠する方でも是非一度は聴いて欲しい曲集だ。
ちなみにボーナス・トラックの『スペイン狂詩曲』のみがモノラルで、それ以外は総て質の良いステレオ録音になる。
ここに収められたピアノ協奏曲や超絶技巧練習曲では一にも二にも音楽が優先されている。
リストを弾きこなすには当然相当のピアニスティックな技術が要求される。
多くの演奏家は指の動く若いうちにこうしたレパートリーを録音してしまうがアラウの演奏には技巧誇示に陥らないだけの有り余るほどの音楽性の裏付けと騎士道的ロマンティシズムが感じられる。
このセットに収められた録音は彼の円熟期から晩年のセッションになる。
それは彼が80歳代までリストを演奏し得た、そして稀有なスケールを持ったサンプルとして聴き継がれている理由だろう。
このセットの中には際物的に扱われているオペラからのアレンジになるパラフレーズ集も含まれている。
薄っぺらなアンコール・ピースになりがちなこうした音楽でもアラウの表現力は卓越している。
極めて集中度の高い、しかも味わい深い曲集に仕上がっていることに驚かされる。
また彼の弾く「エステ荘の噴水」は、滾々と湧き出て絶え間なく降り注ぐ水の描写の中に、リスト自身の深い失恋の痛手を伝えた殆んど唯一の演奏ではないだろうか。
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