2015年09月22日
ポゴレリチの集大成BOX
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鋭く研ぎ澄まされた感性と斬新な解釈、そして切れの良いテクニック、その上スター性を備えたルックスで皮肉にもショパン・コンクール落選後に一躍ピアノ界の寵児となったイーヴォ・ポゴレリチが、デビュー時から1990年代にかけて録音したグラモフォン音源のCD14枚をまとめたBOX。
異色の新人として賛否両論の中でかえって話題をさらった稀有の才能は、グールド以来のピアノ界への大きな波紋とも言えるし、尽きることのないオリジナリティーに富んだ音楽的アイデアとそれを実現する強靭な意志とテクニックには実際驚かされる。
このBOXにはポゴレリチの絶頂期の演奏のエッセンスが集約されていると言えるだろう。
ポゴレリチが語られる時には1980年の第10回ショパン・コンクールのエピソードが常につきまとうことになる。
この時の優勝者はダン・タイソンだったが、既にテルニとモントリオールの覇者でもあり有力候補だったポゴレリチは、最終予選での演奏がショパンの様式に則っていないと判断され、本選に残ることができなかった。
審査員だったアルゲリッチが「彼こそ天才」の捨て台詞を残して退席した事件は、当時の審査委員会の旧態依然とした保守的で偏狭な体質を象徴している。
筆者は、ある時偶然ラジオからピアノ界のある重鎮がポゴレリチのどこが様式から逸脱しているかを、ポーランドのショパンの権威、ヤン・エキエルなるピアニストの演奏と聴き比べてアナリーゼしている番組を聞いたことがある。
しかし引き合いに出されたエキエルのピアノは如何にも杓子定規でちっとも面白くなく、これが正しい奏法だと言われても単なる権威を笠に着た演奏としか感じられず理解に苦しんだ思い出がある。
むしろコンクールでのポゴレリチの果敢な挑戦と鮮やかな敗北に快哉を叫んだものだ。
ポゴレリチは夫人が他界した後、演奏から遠ざかり公式な録音も中断していたが、2010年からは以前のペースを取り戻しつつある。
年齢からすればまだ引退するような時期ではないので、今後の活躍に期待したい。
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