2015年10月01日
ギドン・クレーメル・イン・プラハ
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チェコ・プラガからの新シリーズ、ジェヌイン・ステレオ・ラブの1枚で、ギドン・クレーメルが1974年から78年にかけて行った4回のプラハ・ライヴからの5曲が収録されている。
シューベルトの『華麗なロンド』とフランクのソナタは意外にも端正な演奏で、どちらもクレーメルの研ぎ澄まされた音楽的な造形美が明らかになっている。
フランクでは彼らしい思い切った激しい表現も随所で聴かれるが、渦巻くような情念の燻りというより、楽想にのめりこまない高踏的なアプローチによって、すっきりした明確な様式を感知させていて、師オイストラフの絶大な影響下にあったことが想像される。
一方ラヴェルのソナタの第2楽章は、おそらくアンコール・ピースとして演奏されたものと思われるが、もう少しブルースらしい熱っぽさと軽妙なノリがあってもいいと思う。
いずれもハイ・テンションのライヴだが、セッション録音となんら変わらない完成度の高い表現力は流石にクレーメルだ。
このCDで最も彼らしい音楽性が表れているのがバルトークのソナタ第2番だろう。
若かったクレーメルの野心的な選曲だが、民族的なモチーフから導かれる原初的なパワーの表出手段としての微分音やフラジオレットなどの技巧が必然性を帯びていて、ライヴにありがちな即興的な印象を与えない、かなり綿密にオーガナイズされた説得力のあるスケールの大きな演奏だ。
クレーメルのような個性派のヴァイオリニストには、彼に逼迫するだけの音楽性とテクニックを持ったピアニストが相応しいが、ここでのマイセンベルクのピアノも実に巧みで、ソロに敏感に呼応しながら堂々と自身の個性を主張している。
このアルバムの中でも両者の力量が最も良く示された、聴き応えのあるレパートリーと言えるだろう。
最後に置かれたシュニトケの『モズ・アート』は機知に富んだパロディー風のヴァイオリンのためのデュオで、エレナ・クレーメルが相手をつとめている愉快な小品だ。
演奏会場は総てがプラハ・ルドルフィヌムのドヴォルザーク・ホールで、チェコ・フィルのホームだけあって音響にも恵まれた極めて良好な音質が特徴で、若干客席からの雑音が入っているが、高度な鑑賞にも充分に堪え得るものだ。
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