2015年10月07日

マゼールのガーシュウィン:ポーギーとベス


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1975年のセッションで、この時代の『ポーギーとベス』では屈指の名録音であることに異議を唱えるつもりはない。

ホワイトやミッチェルを始めとする芸達者な歌手陣も彼らの持ち味を良く出しているし、マゼールの優れた統率の下にクリーヴランド管弦楽団も色彩感豊かな音響やジャズのリズム感を巧みに取り入れたガーシュウィンの斬新なオーケストレーションを、手に取るように楽しませてくれる。

歌手達も歌だけでなく、セリフの部分も見事にこなしているのだが、この演奏に弱点があるとすれば、それは音楽的に高尚に解釈され過ぎてしまったことであろう。

それによってこのドラマの持っている荒削りだが、「なまず横丁」に生きる黒人達の貧しくもしたたかな生き様や、人間の性(さが)によって起こされる犯罪への危機などが、すっかり払拭されてしまった印象が残ることではないだろうか。

確かにオペラをCDで聴く場合、鑑賞者側にそれぞれの場面をイメージするファンタジーが求められるが、この演奏を聴く限りではどん底のスラム街を想起することに多少の無理がある。

何故なら逆説的な言い方かもしれないが、マゼールによってクラシックの範疇に属するオペラとして几帳面に整理し尽くされた格調高い音楽には羽目を外した遊びも混沌もないからだ。

こうした作品にはオペラとしての完璧さよりも、むしろ芝居としての演出を前面に出すことの方が優先されるべきだろう。

この作品が後のミュージカルの先鞭をつけているのが偶然ではないように、そこにはガーシュウィンの求めた人間臭さや卑近さがもっとあっていい筈だ。

個人的には『ポーギーとべス』の初演指揮者アレクサンダー・スモーレンスがレオンタイン・プライスやウィリアム・ワーフィールド達を引き連れて4年間のツアーを行った際の1952年のベルリン・ライヴが忘れられない1組になっている。

プライス若き日の驚異的にパワフルな歌唱もさることながら、ひとつひとつのシーンが目に浮かぶような真実味が感じられる演奏だからだ。

オーケストラのリアス・ウンターハルトゥング管弦楽団は精緻ではないが乗りに乗った快演で、音質がマゼール盤に比べればかなり貧しいモノラル録音であるにも拘らず、そこから聴こえてくる音楽にはガーシュウィンの意図した作品の野太さと、指揮者の強い共感と表現への一致がみられる。

また1963年に主役の2人を再び迎えたスキッチ・ヘンダーソン指揮、RCAビクター管弦楽団のステレオ・セッション録音の抜粋盤も捨て難い魅力を持っている。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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