2015年10月24日
スーク&パネンカのフランス・ヴァイオリン作品集
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ことさらスケールの大きな演奏ではないが、とびっきり品の良いサロン・スタイルにまとめあげたという感じの曲集で、パネンカの高潔とも言うべきピアノに支えられてスークの流麗なソロが水を得た魚のように大らかなファンタジーを飛翔させている。
いつもながら美音を駆使したスークのカンタービレは、常に節度を保っていて歌い崩すこともなければ耽美的にもならない。
それは特に美音では人後に落ちないパネンカと組んだ時にその傾向が強く、またそれだけピアニストの隙のない音楽設計と、きめ細かなディナーミクが強く影響しているからだろう。
パネンカは伴奏の役割を誰よりも心得ていて、先ずソロを引き立てる側に回るが、実際にはその曲を決定付けるほどの主導権を発揮する。
それはこのCDに収められている3曲に共通していることだが、精緻なピアニズムの上に奏でられるヴァイオリンのロマンスといった趣を持っている。
1曲目のプーランクのソナタでは両者のセンスの良さが際立っていて、楽想の面白みをむき出しの情熱ではなく、むしろけれんみのない表現であっさりと仕上げているところに好感が持てる。
この作品はファシズムに反対し、若くして暗殺されたスペインの詩人フェデリコ・ガルシア・ロルカに献呈され、音楽も彼の生涯に関連させているらしいが、スークとパネンカの演奏は明快で、それほど陰鬱な表現ではない。
それは標題音楽的な描写を避けてプーランクの美学の本質を捉えようとしているからだろう。
フランクのソナタにしてもこの曲の持つ緊張感や哲学的な重みよりも、率直に音楽の美しさを描き切った演奏で、スークの明るく艶やかな音色がすこぶる心地良い。
パネンカは比較的冷静にヴァイオリンの旋律を支えているが、音楽に冷たさがないのは音色の微妙な変化や華やかな盛り上げ方を効果的に取り入れているからだ。
尚スークはこの曲を後年ヨゼフ・ハーラとも再録音している。
最後に置かれた愛らしいフォーレの『ベルセーズ』も含めて総て1967年の初期ステレオ録音だが、スプラフォンの技術水準は当時の東欧諸国の中では群を抜いていて、鮮明な音質とバランスの良さはその証左だ。
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