2015年10月28日
カルミニョーラのバロック・ヴァイオリン・エッセンス
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ジュリアーノ・カルミニョーラが1999年から2002年にかけてソニーに録音したCD7枚をまとめたセットで、バジェット価格でのリイシュー化を評価したい。
中でも彼の音楽性が最も高次元で表出されているのは、やはりヴィヴァルディの協奏曲集だ。
尽きることのない作曲家のファンタジーが、カルミニョーラの比較的シンプルなカンタービレやあらゆるヴァイオリンのテクニックを駆使した激情的な表現手段によって効果的に示されているが、それらが彼の情熱のごく自然な発露として噴出しているのが秀逸だ。
それに続くロカテッリの『ヴァイオリンの技法』はそれぞれの協奏曲に長大な超絶技巧のカデンツァを挿入した協奏曲集で、言ってみれば当時の最高峰の秘伝的奏法をカルミニョーラの美しい音色と理想的な演奏で聴けるのは幸いだが、そこには後のパガニーニが『24のカプリース』で試みた、殆んど技巧のための技巧の曲集といった、時としてくどい印象が残るのも事実だろう。
アンドレア・マルコン指揮、ヴェニス・バロック・オーケストラのスリリングで気の利いたサポートも特筆される。
意外だったのがバッハのヴァイオリンとオブリガート・チェンバロのための6曲のソナタで、カルミニョーラは抑制を効かせながらも流麗に、しかも誠実に弾いている。
チェンバリストのアンドレア・マルコンもレジスターを使った音色の変化を控えめにして、ソナタの曲想や対位法の忠実な再現に心掛けているように思える。
この曲集はいずれのパートにも一切ごまかしのきかない厳格なアンサンブルが要求され、また彼らが得意とする即興演奏の余地もないが、2人のイタリア人がピリオド楽器で演奏するバッハとして非常に高い水準であることは確かだ。
尚最後の1枚はリュート奏者のルッツ・キルヒホフを迎えた4曲のトリオ・ソナタ集で、ヴァイオリンと相性の良いリュートの響きが耳に心地良く、キルヒホフの堂に入った奏法も聴きどころだ。
全体的に音質は極めて良好。
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