2015年11月01日

フリッチャイの遺産(オペラ及び声楽作品篇)


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昨年の第1集45枚のボックスではフリッチャイのオーケストラル・ワークを堪能させてくれたが、今回のオペラ及び声楽作品篇は37枚のCDに更にデュカスの交響詩「魔法使いの弟子」とコダーイの『ハーリ・ヤーノシュ組曲』のリハーサルとその本番を収録したDVDが1961年のモノラル録音ながらボーナスとして加わって、2巻合わせると網羅的なコレクションに相応しい内容になっている。

フリッチャイが音楽監督に就任したバイエルン国立歌劇場管弦楽団及びベルリン・ドイツ・オペラでの活動が期待されていたにも拘らず、不治の病のためにごく短期間でそれらのポストからの降板を余儀なくされたが、個々に収録されたオペラはバルトーク『青髭公の城』(独語歌唱)、ベートーヴェン『フィデリオ』、グルック『オルフェオとエウリディーチェ』(独語歌唱)、モーツァルト『後宮からの誘拐』『魔笛』『ドン・ジョヴァンニ』『イドメネオ』『フィガロの結婚』、J.シュトラウス『こうもり』、ストラヴィンスキー『エディプス王』(独語歌唱)、ワーグナー『さまよえるオランダ人』の合計11曲に上り、更にビゼーの『カルメン』が独語歌唱ながらハイライトで入っている。

この時期のドイツのオペラ劇場ではまだ訳詞上演が一般的だったのである程度は致し方ないが、1人の指揮者によるオペラ全曲盤のセッション録音がまだ限られていた時代に、フリッチャイが如何に情熱を注いでこうした作品に取り組んでいたか想像に難くない。

オペラ以外の声楽作品ではコダーイの『ハンガリー詩篇』(独語歌唱)、ハイドンのオラトリオ『四季』とヴェルディの『レクイエム』がそれぞれ2種類ずつ組み込まれていて、数年の間のフリッチャイの解釈の変化を聴き比べることができる。

CD11『ハンガリー詩篇』は1959年のステレオ・ライヴ録音の方が全体的な完成度が高い。

演奏時間も1954年のセッションに比べて5分ほど長くなっているが、ドラマティックで彫りの深い表現に加えてへフリガーの熱唱が称賛に値する。

CD1バルトークの世俗カンタータ『9匹の不思議な牡鹿』も独語歌唱だが、フリッチャイにその才能を見出されたフィッシャー=ディースカウの歌う、9人の息子の父親役は、フリッチャイのごく初期のレパートリーとしても貴重だ。

フリッチャイによって起用された歌手もソプラノのシュターダー、シュトライヒ、ゼーフリート、グリュンマー、アルトのテッパー、テノールのヴィントガッセン、へフリガー、バリトンのフィッシャー=ディースカウ、バスではホッター、グラインドルなど一流どころが顔を揃えているのも頼もしい。

廃盤の復活にも注目すべきものが多く、例えばCD15−16モーツァルトの『後宮』は、語りの部分は役者を当てているが、ジングシュピールの伝統に則った闊達なセリフのやり取りによる劇の運びや絵画的なシーンをイメージさせながら登場人物を描き分けるフリッチャイの音楽空間が絶妙で、このセッションは奇しくもパリのクラシック批評誌『ディアパソン』自主制作のCDとしても今月の新譜で復活している。

同じくモーツァルトでCD13の『大ミサ』はダイレクトで劇的な指揮に沿ったシュターダーの名唱を1959年のステレオ録音で鑑賞できるのは幸いだ。

未完成のまま遺された「クレード」は補筆版を演奏しているが「アニュス・デイ」は省いている。

またCD36のフィッシャー=ディースカウ若き日のオペラ・アリア集はドイツ、フランス、イタリアものを自在に歌った1枚で、イタリア・オペラではいくらか理屈っぽく聞こえるが、表現の多彩さと声楽的なテクニックには流石と思わせるものがある。

このセットでフリッチャイが指揮しているオーケストラはベルリン放送交響楽団とその前身に当たるRIAS交響楽団、バイエルン国立歌劇場管弦楽団、ベルリン・フィル及びウィーン・フィルになるが、中でもRIASは戦後間もなくフリッチャイによって鍛え上げられた手兵楽団で、団員の個人的技術水準の高さもさることながら、歌物では歌手に合わせる柔軟で臨機応変な機動力にも傑出したオーケストラだった。

尚CD37はフリッチャイの死の前年に行われた録音で、それまでの人生を振り返って自身のキャリアや音楽観についてほぼ1時間に亘ってフリッチャイ自身がドイツ語で語っている。

指揮者の父を持ち、ピアノをバルトークに、作曲をコダーイに学ぶという理想的な環境で学習できたフリッチャイは、なるべくして指揮者になったと言えるだろう。

これはDVDにも共通することだがフリッチャイのドイツ語は一昔前の発音で、明瞭で分かり易いのが特徴だ。

また要所要所にフリッチャイの指揮による音楽が挿入されているところをみると、一種のドキュメンタリーとして制作されたようだ。

DVDではフリッチャイのエネルギッシュなリハーサル風景が貴重だ。

フリッチャイの師でもあったコダーイの作品ではユーモアを交えながら楽員達に丁寧な説明を加えている。

また本番では2曲とも暗譜で臨んでいるが、指揮棒を使わない指揮法も見どころだ。

古い動画なので数ヶ所に音揺れがあるが鑑賞には全く差し支えない。

第1集よりCDの枚数は少ないが、組物は初出盤をイメージさせる折りたたみ式の厚手のジャケットに入っているので、ボックスの大きさは前回と同様に統一されている。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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