2015年11月11日

シノーポリのプッチーニ:歌劇「蝶々夫人」


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シノーポリがフレーニと共に録音した《蝶々夫人》は、このあまりにもポピュラーなオペラの中から数多くの猗見瓩鰺燭┐討れるものである。

オペラを解体しようとしてるんじゃないのか、というシノーポリの指揮がうまくいった例がこの《蝶々夫人》で、心理的分析と旺盛な表現意欲によって聴き古されたこのオペラが生まれ変わった。

シノーポリの緻密でドラマティックな表現が、この作品を奥深い心理劇に仕立てていて、大変見事だ。

プッチーニの音楽の中には、イタリア・オペラの長く豊かな伝統に加え、後期ロマン派風の濃厚なロマンティシズムやドビュッシーに代表される印象派の影響が複雑に絡まりあっている。

シノーポリは、このすべてに配慮しつつ、野獣のような表現意欲と音楽の推進力によって、オペラ全体をまとめ上げている。

劇性・色彩感においても、シノーポリの音楽作りは比類がなく、神経の行き届いたというかピリピリしたというか、とにかく張り詰めた演奏で、悲劇の、いわば覇気に説得力がある。

異常なテンポのゆれは、正道を行くカラヤンの演奏を聴いてこそ感じる部分もあるが、まさに蝶々さんの心理に密着したものとして新鮮に心に響く。

プッチーニが意図したオペラを超えているかもしれないとしても、複雑な総譜のなかからシノーポリが発見したこの鉱脈は非常に現代的で説得力がある。

シノーポリは、エキゾティズムを含めた視覚的広がりの部分、たとえば第1幕の蝶々さんの登場、僧侶の場面、第2幕のスズキとの二重唱など、思い切りファンタジーを拡げ、聴く者を満足させる。

終幕、蝶々さんがケイトを見てしまうあたりから、がぜんシノーポリが本領を発揮し、この作品に大変真面目な、ショッキングな効果を与える。

だが、この全曲盤の魅力の多くは歌にある。

このオペラのヒロインである蝶々さんをうたうソプラノには、同じ題名役でもトスカとはまた違ったむずかしさがある。

何しろ第1幕でピンカートンと結婚する蝶々さんはまだ15歳の少女であり、当然リリックな声のソプラノがふさわしいのだが、その3年後の第2幕は非常にドラマティックな表現が求められている。

しかもプッチーニの分厚い響きの管弦楽をバックにしてうたわなければならないのだから、非常にむずかしい。

これまでのところ、抒情性と劇的表現という二律背反するような蝶々さんをもっとも見事に表現しているのは、このシノーポリ盤におけるフレーニである。

フレーニは舞台ではこの役を演じたことがなく、とうてい演技派とはいえない歌手だが、声だけに限定すれば、1970年代以降の円熟した彼女ほど声で雄弁に演技できるソプラノはいないように思う。

ここでのフレーニの充実ぶりは特筆すべきで、カラヤンとの1974年での彼女の歌唱もすばらしいが、シノーポリの指揮でまったく違った女性像を作り出している。

彼女の声がどれほど柔軟に異なる指揮者の棒に適応するかを実感するという興味もあるが、年輪を重ねたフレーニの声と表現の成熟は、圧倒的な存在感を生み出しており、カラヤンとの録音や映像での名唱以上に、強い自己投入と生命力を示した、抒情性たっぷりでひたむきな円熟の名唱は感動的だ。

またフレーニの豊麗な声と豊麗なオーケストラは見事に溶け合って、この東洋の少女のファンタスティックな世界を表現する重要な要素になっている。

その他配役に関しては、ほぼすべての役がぴったりはまっており、少し誠実すぎるかな、というカレーラスのピンカートンも悪くなく、ベルガンサのスズキ、ポンスのシャープレスも見事で、演奏を豊かにするのに大きな役を果たしている。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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