2015年11月13日
アンセルメ・デッカ・レコーディングス〜フランス音楽集
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ここ数年ユニヴァーサル・イタリーの企画によるバジェット価格のセット物が矢継ぎ早にリリースされていて、それぞれが気の利いた内容を持っているためにクラシック・ファンには目が離せない。
エルネスト・アンセルメのデッカへの録音の集大成は、ドビュッシーの2種類の『ペレアスとメリザンド』を含むフランスの作曲家の作品をまとめたこの30枚組が第1巻で、これ以外にも彼が得意としたロシア物の第2巻が既に刊行され筆者もレビューを書いたところだが、今後はファリャを始めとする彼の初演になる作品群も組み込まれるらしい。
幸いアンセルメの代表的なセッションはその殆んどがデッカに録音されていて、1950年代から1960年代にかけての比較的良好な音質に恵まれた音源がこのシリーズで網羅されることは、オールド・ファンにとって朗報には違いないが、反面当時の正価で1枚1枚買い揃えた学生時代を思い出すと複雑な気持ちにならざるを得ない。
このセットでのオーケストラは13枚目、ラヴェルの『ボレロ』及び『ラ・ヴァルス』を演奏しているパリ音楽院管弦楽団以外は、アンセルメ自身によって設立されたスイス・ロマンド管弦楽団が総てのレパートリーをカバーしている。
かつて彼らがオーケストラとしては二流のレッテルを貼られたことも事実だろう。
確かに現代の一流どころに比べれば個人個人の技術的な差は否定し難いが、一方でアンセルメによって統率された表現力となると、彼ら独自の機動力と真似のできない鮮やかな音色を駆使した驚くほど高い水準の演奏に到達している。
現在私達が接するオーケストラの典型とも言える安定した中低音に支えられた整然としたアンサンブルとは趣を異にした、やや線の細い華奢な響きだが、透明感のある軽妙洒脱なセンスが感じられるのが特徴だろう。
それはとりわけフランスの音楽に本領を発揮していて、このセットでは彼らの水を得た魚のような、生き生きとして虹のような光彩を放つ表現が至るところで堪能できる。
アンセルメは指揮者として舞台デビューを果たす以前は数学の教師だったそうだが、ピエール・モントゥーの後を受けて、ディアギレフ率いるバレエ・リュスの専属になってからは、モントゥー同様数多くの創作バレエの初演を果たしている。
彼の演奏のオリジナリティーが、当時の革新的な作品上演の連続的な実践によって培われ、洗練されていったことは想像に難くない。
またアンセルメの手腕はオーケストラの音響作りにも良く表れていて、その鮮烈な響きに感知されるセオリーと感性のバランス感覚の鋭さには尽きない魅力がある。
尚ライナー・ノーツは34ページで演奏曲目の他に簡易なアンセルメのキャリアが英、伊語で紹介され、最後の5ページを録音データに当てている。
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