2015年11月15日
モントゥー&ロンドン響のラヴェル[SACD]
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このディスクに収録された曲目はオープン・リール磁気テープに録音されたデッカの音源だが、プラガ・ディジタルスの新シリーズで現在続々とリリースされているDSDリマスタリングによるSACD化された歴史的名演のひとつだ。
これを聴いての第一印象は、オーケストラのそれぞれの楽器の音像が明瞭に感知されることと、ホールの空気感を伝える音響空間も極めて立体的で、この時代のセッションとしては驚異的に鮮明な音質が再現されていることだ。
勿論古いアナログ録音なのでテープ・ヒスは聞こえるが、広めの空間で再生するのであれば煩わしさは全く感じられない。
この企画の成功例のひとつと言えるだろう。
ピエール・モントゥーの指揮は、同じフランスものを指揮してもミュンシュのような作品にのめり込むような白熱感とは一線を画した、シックでしかも精緻なオーケストレーションを手に取るように聴かせてくれる。
この作品集ではモントゥーのオリジナリティーに富んだ解釈だけでなく、冷静とも思えるきめ細かい几帳面な指示と、フランスの指揮者特有の大らかなセンスが共存していて、ラヴェルの管弦楽法の面白みを堪能させてくれる。
そうしたモントゥーの勤勉さはここに収められた『ダフニスとクロエ』を始めとする多くの新作の初演を彼自身が果たしていることからも立証されている。
またモントゥーの手兵だったロンドン交響楽団は、フランスのオーケストラに較べればやや醒めた感じがするが、その統率された機動力の素晴らしさも聴きどころになっている。
ラヴェルらしい、細密画のように明朗な『スペイン狂詩曲』、目の前にイメージを喚起させるような天上的な美しさの『亡き王女のためのパヴァーヌ』や、色彩感と幻想に満ちた超自然的な『ダフニスとクロエ』のいずれもが名演の名に恥じない音楽的な質の高さを示していて、モントゥーの実力が歴然としたセッションのひとつだ。
最初の2曲が1961年、『ダフニス』が1959年にそれぞれロンドンで録音されている。
1959年および1961年ということでモントゥーの比較的晩年の演奏であるが、旋律のデュナーミクの施し方も実に息が長く、自然。
ロンドン交響楽団の、見事に融け合う管楽器の音色、そしてモントゥーが引きだす弦楽器の高貴な音色も素晴らしい。
尚このアルバムと全く同じ内容のCDがデッカからもオリジナルス・シリーズとしてリリースされているが、音質的にはこちらに軍配が上がる。
ライナー・ノーツは11ページほどで、曲目及びモントゥーについての簡易な解説が英、仏語で掲載されている。
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