2015年11月17日

カラス&カラヤンのプッチーニ:歌劇「蝶々夫人」[SACD]


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カラヤンの旧盤で、カラスの同オペラ唯一のセッション録音。

カラヤンの指揮ぶりは、ミラノ・スカラ座の長所を生かし、濃厚なカンタービレと色彩感に秀でているのがよく、ここには若き日のカラヤンが作り出している音楽のイタリア的な明るさと流麗さがある。

カラヤンの描く雄弁で彫りの深い音楽は、単なる感傷や慟哭の誇張としてではなく、プッチーニがここで意図した精妙な音色の効果とドラマとの結合を十全に描きつくしている。

もちろん、ドラマの力強い起伏や悲劇的な緊張、あるいは管弦楽の雄弁さなどのカラヤンの特質も示されていて、新盤とは違った濃密な表現で歌手を支えている。

より徹底された「カラヤン美学」は、後のウィーン・フィル盤に発揮されているが、サウンドがあまりにも耽美的、ムード的に過ぎることと、イタリアの色彩感や空気感に無縁なのが寂しい。

カラスのタイトル・ロールについては、このドラマの中でヒロインの果たす役割が大きいだけに、それに応じて彼女の歌の威力がフルに発揮され、ドラマ全体を凄まじいばかりの力で引っ張っていくさまは壮観というほかはない。

蝶々さんに純情な少女を求める人にはお薦めできないかもしれないが、筆者にはライバルと言われたテバルディの歌声が、どうしても大人の女の声に聴こえてしまうのに対し、カラスの声は瞬時に15歳の幼く、純真で、哀れな蝶々さんに変身してしまうところが心憎い。

とはいえ、カラスといえども第1幕では純情可憐な15歳の娘になろうとしてなりきれず、表情を作り過ぎたきらいがあり、やや作り物風で、違和感を感じる人もいよう。

ヴィブラートは多いし、演技が重くて、声は暗く、可憐さがないと忌み嫌う人もいることであろう。

しかし、そうした外面を超えて、カラスは史上最高レベルの蝶々さんなのだと強調しておきたい。

カラスの素晴らしさは、その群を抜いた発声技術にあるのではない。

ヒロインの心情を歌い上げる「思いやり」と「感受性」の強さである。

陰りのある声で独自の蝶々さんを演じてカラヤンの指揮ともども強烈に聴き手に訴え、幕切れの愛の二重唱以降は彼女の表現者としての凄さが発揮され、特に最後のアリアでの壮絶で迫真的な表現には聴いていて思わず息を呑まされる。

前半はテバルディとフレーニに及ばぬにしても、後半でのカラスの感情表現は最高で、ラストのシーンに集約される劇的な迫力は、カラスならではの素晴らしさで圧倒される。

ゲッダも絶好調で輝かしい甘美な高音と情熱的な歌唱など、CDに聴く最良のピンカートンのひとりである。

脇役もそれぞれの声と持ち味を充分に発揮していて、充実している。

1955年のモノラル録音であるが、SACD化により瑞々しい音質に蘇っており、少しの不満もない。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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