2015年11月18日

ポリーニ/最新のドキュメンタリー作品[DVD]


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ブリューノ・モンサンジョンの手掛けた最新のドキュメンタリーで、彼らしい演出的な操作をしない淡々としたインタビューと若い頃から現在までのポリーニの貴重な映像を繋ぎ合わせた手法の中に、稀有のピアニストの偽りのない姿を浮き彫りにしている。

一連のインタビューでポリーニ自身が暗示しているように、彼は自分自身や家族との日常生活については演奏活動とは常に切り離していた寡黙の人だった。

その彼が70歳を過ぎてから初めて語り始めた少年時代から現在に至る半生には、私達が今までに知ることができなかった意外なエピソードも含まれている。

ポリーニが18歳でショパン・コンクールの覇者になった時の映像は流石に初々しく隔世の感が否めないが、この時の審査委員長ルービンシュタインから『彼はテクニック的にはここにいる誰よりも上手い』と言われたことをポリーニ自身は、居並ぶ審査員に対する皮肉だと解釈している。

しかしこの言葉から意図的に『テクニック的には』が削除されて広まってしまったために、如何にも大袈裟な評価として残ってしまったとしている。

彼がその直後演奏活動を休止した理由については、引く手あまたのコンサートを続けるには余りにも若く無知で、更なる音楽の習得とショパンだけではない他のレパートリーを開拓する時間を捻出するためだったと回想する。

つまりルービンシュタインの言葉を誰よりも深刻に受け止めていたのがポリーニ自身だった。

このDVDを見ればポリーニが一般に誤解されているような無味乾燥の機械屋でないことが理解できるだろう。

音楽と政治とは分けて考えるべきものだという彼の主張も興味深い。

その言葉通り彼は演奏の場に政治色は決して持ち込まなかった。

彼のイタリア共産党入党には勿論友人ルイジ・ノーノやアバドの影響もあったに違いないが、直接的な動機はソヴィエトのプラハ侵攻を当時のイタリア共産党が非難したことに共感を得たからのようだ。

ただポリーニは、音楽は総ての人のためにあるというモットーから、友人達と労働者や学生のためのコンサート活動も積極的に行った。

ここでは彼が工場の中でベートーヴェンの『皇帝』を弾くクリップも挿入されている。

筆者自身彼のリサイタルを破格に安い入場料で聴いたことを思い出した。

ポリーニはレパートリーの少なさでも他のピアニストとは一線を画しているが、長年に亘って弾き込んで行く曲目で残ったものは、私が(精神的に)疲弊しない曲だと告白している。

その上でスカルラッティやラヴェルを弾けないのは残念だとも述べている。

最後の質問で『貴方は伝道師のような使命感を持って演奏活動をしているのか』と尋ねられると、ポリーニは『とんでもない、私の個人的な喜びのためだけです』とかわしている。

これは謙遜というより確かに彼の本心かもしれない。

ポリーニがインタビューで話しているのはイタリア語とフランス語だが、字幕は英、独、仏、中、韓、日本語の選択が可能で、日本語については要点を簡潔に訳出したもので、この手の字幕スーパーの中ではまともな仕上がりになっている。

リージョン・フリーで挿入されたパンフレットには、このDVDに使われた映像での総ての演奏曲目が掲載されているが、それらのデータは記されていない。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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