2015年11月21日
カラス&セラフィンのドニゼッティ:歌劇「ランメルモールのルチア」(旧盤)
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マリア・カラスは生涯にドニゼッティの『ランメルモールのルチア』のセッションを2回行った。
どちらも指揮はトゥリオ・セラフィンだが、このセットは1953年のモノラル盤で、ディ・ステファノとティト・ゴッビが協演している。
一方1959年盤ではタリアヴィーニとカプッチッリが他の役を固めているが、主役ルチアの余りにも鮮烈な「狂乱の場」の絶唱と、若き日のディ・ステファノの情熱的なエドガルド、性格俳優を声で体現したゴッビのエンリーコなど、総合的にみてデ・サバタ指揮の同メンバーによる『トスカ』と並ぶオペラ録音史上に残るセッションとして高く評価したい。
勿論カラスのより細やかな心理描写や円熟味、スタイリッシュなタリアヴィーニの歌唱やより充実したオーケストラということでは第2回目のステレオ録音も劣っているわけではないが、ここには短かったカラス全盛期の生々しい歌声が横溢している。
カラス以前のいわゆるコロラトゥーラ・ソプラノによって歌われたルチアは、例外なく声楽的なテクニックを優先させたアクロバティックな連続技の披露に留まり、主人公に隠された心理やおぞましい情念などは表現し得ない綺麗ごとに終始していたのが事実だ。
しかしカラスはゴッビと並んでドラマを声によって描く術を知っていた稀有な歌手だった。
この2人はまた舞台上の演技でも傑出していて、イタリア・オペラが美しいアリアの羅列だけではないことを改めて世に知らしめた。
彼女の声は決して純粋な美声とは言えないが、声の明暗やダイナミクスを自在に使いこなして、何よりも役柄になりきるカリスマ的な才能に恵まれていた。
発狂したルチアの延々と続くモノローグ「狂乱の場」は、作曲家ドニゼッティの霊感が乗り移ったかのように真に迫っていて、音源の古さをカバーして余りあるものがある。
指揮者トゥリオ・セラフィンはトスカニーニの後を継いでスカラ座を振り、伝統的なイタリア・オペラ上演の継承者としての地位を築きながら、逸早くマリア・カラスの才能を見出してイタリア式ベルカントを教え込んで彼女を多くの主役に抜擢した。
彼は歌のパートを活かすということにかけては超一級の腕前を持っていたが、オーケストラの采配も実に巧みで、ここではやや非力なフィレンツェ5月祭管弦楽団を率いて、緻密でしかもスケールの大きな舞台を創り上げている。
また第1幕で歌われるアリア「辺りは静けさに包まれ」や狂乱の場「香炉は燻り」でのカンタービレやコロラトゥーラ唱法からも、カラスが如何にセラフィンからの薫陶を受けていたか想像に難くない。
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