2016年03月21日
ヒラリー・ハーン/コンプリート・ソニー・レコーディングス
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ヒラリー・ハーンがドイツ・グラモフォンに移る前のソニー・レコーディングをまとめた5枚のCDセットは、従来のジュエル・ケースを5枚分束ねた形で既に2008年にリリースされていた。
今回のリイシューはライナー・ノーツ等を一切省いてCDのみをそのまま簡易なボックスに移し替えたもので、収録曲目については全く同様だがシェイプアップされてずっとコンパクトな仕様になった。
彼女のデビュー時から初期の録音が一気にコレクションできる便利さに加えてバジェット盤なので流通経路によってはかなりプライス・ダウンされている。
ソニーは新人には冒険をさせずに売れ筋の曲を録音させる傾向が無きにしも非ずで、その辺りのポリシーがハーンとの齟齬を招いたのかも知れないが、2003年以降彼女との契約を更新できなかったことはソニーにとっても芸術的な損失であったに違いない。
しかし流石にキレの良い鮮明な音質はハーンの清々しいヴァイオリンの音色を良く伝えている。
CD1は彼女が17歳で鮮烈なCDデビューを飾ったバッハの無伴奏ソナタとパルティータからの選集で、その如何にもフレッシュな音楽性とテクニックの調和は、ヴァイオリン界の新星という形容詞に相応しいものだったが、ハーンのその後の成長を見れば単なる器用な美少女ではなかったことは明らかだし、これから再びバッハに挑戦することも期待したい。
それに続く協奏曲集でも感性主導型が多い女流ヴァイオリニストとは一線を画した一種謎めいた冷やかさがあって、その辺りにとっつきにくさを感じる人もいるかも知れない。
当時のハーンの年齢からすれば当然だが、確かにこの時期の彼女には完成されたヴァイオリニストとしての資質は備わっていたとしても、余裕というか遊びの部分が欲しかった。
それはCD3のエドガー・メイヤーの協奏曲を聴けば明らかだろう。
しかし彼女の演奏には耽美的な要素は微塵もなく、常に知的な雰囲気が漂っていて、即興的な面白みやスリルはないかも知れないが、感性と知性のバランスを真摯に探る姿勢が今後のハーンの演奏にも反映されることは確実だろう。
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