2015年11月30日
キーシン青年期までのRCA及びソニーへのコンプリート・レコーディングス
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エフゲニー・キーシンは少年時代から青年期にかけての殆どの公式録音をRCAとソニーに入れている。
そのためにこの25枚のCDに彼の演奏活動前半期の代表的なレパートリーが収録されていると言えるだろう。
この時期のキーシンは溢れんばかりの閃きを飛びっきり洗練された趣味とテクニックに託して、苦もなく颯爽と弾いているような印象を与えている。
その天性の音楽性の豊かさと表現の容易さには実際恐るべきものがある。
確かにこれまでのキーシンのレパートリーは、彼のピアニズムを最も良く示すヴィルトゥオジティを発揮した作品が多かったが、それは取りも直さずロシア派ピアニストの伝統的な奏法を象徴するような豊かな抒情と精緻なテクニックに支えられている。
こうした演奏を聴いていると彼の若い頃が如何に順風満帆だったかが一目瞭然だ。
現在43歳の彼の録音活動はめっきり減って、コンサートでの曲目も更に音楽的に深みのあるものに変わりつつあるが、あの頃のように天衣無縫に弾いているかというとそうとも言えない。
しかしまた才能を消耗し尽して彼の音楽的な源泉が枯渇したとも思われない。
少なくとも現時点の彼は自身の芸術家としてのスタンスを模索しているように感じられるし、それは一角の芸術家が多かれ少なかれ通過しなければならないピリオドでもあるだろう。
その意味では正念場に差し掛かっているピアニストの1人で、将来どういう方向に進むか注目したい。
初出音源はないが協奏曲ではハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューマン、ラフマニノフ及びショスタコーヴィチの6人の作曲家からの9曲が収録されている。
このセットには版権の異なるショパン、チャイコフスキーやプロコフィエフがないのが残念だが、いずれもキーシンの万能でフレッシュな感性と潔癖なまでに磨き抜かれたピアニズムを映し出している。
中でも小沢征爾、ボストン交響楽団とのラフマニノフの第3番は瑞々しい抒情とスケールの大きさ、華麗なロマンティシズムで秀逸だ。
ソロではCD2枚分のリスト作品集は胸のすくようなテクニック、惚れ惚れするほどの集中力を維持しながら決して厚かましくないスマートさが新時代のリストの解釈を率先しているが、またCD12及び19のシューマンの幻想曲ハ長調、ピアノ・ソナタ第1番嬰ヘ短調と『謝肉祭』が作曲家特有の文学的センスを感じさせるだけでなく、これからのキーシンの音楽的な方向性を予感させるレパートリーではないだろうか。
パンフレットにはこのセットに収録された総てのアルバムのオリジナル・ジャケット写真と演奏曲目、更にアルファベット順作曲家別作品のインデックスが掲載されている。
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