2015年12月03日

ヘンツェ特集盤


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ヘンツェの作品はどれも人間の深層心理を音楽で具現するような不気味な曲趣を持っているために、心地良い響きに身を委ねたいクラシック・ファンには気の滅入るネクラな作曲家として敬遠されるかも知れない。

しかし彼の曲を注意深く聴いていると、研ぎ澄まされた極めて精妙なオーケストレーションに仕上げられていることに驚かざるをえない。

その入念さは殆んどラヴェルに通じるものがあるように思える。

このCDの第1曲目『大オーケストラのための舟歌』は、唸りを上げて軋むような轟音を響かせるサイモン・ラトルと彼の強力な手兵バーミンガム市響による1992年のライヴが秀逸だ。

皮肉にもバルカローラ特有の、揺れ動くハープの継続的なリズムはいつの間にか消え失せてしまう。

イメージを欲しい方はヘンツェ自身が言う、冥界を流れるステュクス河を渡って死に行く人、あるいは10年の漂流を終えて故郷イタカへの帰還を待つ嵐の晩のオデュッセウスを想像してもいいだろう。

しかしこの曲は表題音楽として捉えるより、むしろ絶対音楽の範疇で鑑賞する方がより自然な気がする。

同じメンバーによるもうひとつのライヴが交響曲第7番で、ブラスやパーカッション・パートが非常に充実した曲だが、ラトルの知性的な采配が音の洪水を避けた繊細で巧みな表現を堪能できる。

2枚目は混声合唱が加わる交響曲第9番は、インゴ・メッツマッハー指揮、ベルリン・フィルとベルリン放送合唱団による1997年のライヴだ。

作曲者の指示に忠実に取り組んだ冷静な演奏に好感が持てるし、第6楽章への頭脳的に導かれるクライマックスも非常に充実感がある。

特別な機会にしか演奏されないこうした曲が、将来オーケストラのレギュラー・レパートリーとして残ることを期待したい。

少年時代のヘンツェには、ヒトラー・ユーゲントとして間接的ではあったにせよ、ナチの大虐殺に手を貸した暗い過去がある。

そのことは彼に贖いきれないほどの深い悔いと悲しみを残した。

この作品は辛辣な自己批判から生まれたものだが、また個人的な理由に留まらず、人類全体に殺戮行為の愚かさと悲惨さを知って欲しいという切実なメッセージが込められている。

ベートーヴェンの「第9」が人類愛への『歓喜の歌』なら、ヘンツェのそれはさしずめ人間のさがへの『絶望の歌』だろう。

このCDではその他にイアン・ボストリッジのテノール、ジュリアス・ドレイクのピアノ伴奏による2000年のセッション『3つのオーデンの歌』がカップリングされている。

尚この曲集はボストリッジ自身によって前年に初演されたものだ。

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classicalmusic at 05:19コメント(0)トラックバック(0)ラトル  

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Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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