2015年12月12日
準・メルクル&国立リヨン管のドビュッシー:オーケストラル・ワーク集
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ドビュッシー生誕150周年記念としてリリースされているセット物の中でも、このナクソス盤は彼のオーケストラル・ワークのみに絞った9枚組で、セットの特徴はドビュッシーの管弦楽のための作品のコンプリートであること、前奏曲集をはじめとするピアノ曲集にオーケストレーションを施した編曲版が総て含まれていること、更に演奏者が準・メルクル指揮、国立リヨン管弦楽団で統一されているところにある。
こうしたオリジナリティーに富んだ企画はそれほど多くなく、従来の歴史的名演の廉価盤化によるリイシューに複雑な思いのオールド・ファンには一味違った新鮮な魅力があるし、総て2007年から2011年にかけての新しい録音なので、入門者の手頃なドビュッシー体験盤としてもお勧めしたい。
日系ドイツ人指揮者、準メルクルはチェリビダッケの弟子だけにオーケストラの楽器間のバランスのとり方が巧みで、むやみに走らない落ち着いたテンポ設定も特徴的だ。
特にこの作品集ではその透明に醸し出される響きと、感性豊かで美しい叙情的表現も聴き所のひとつだ。
第1曲目に収められた『牧神の午後への前奏曲』での、夢と現実の間を彷徨うような白昼夢的な雰囲気も彼独自の手法だ。
また編曲物では本来ピアノ用の『喜びの島』が、この曲の超現実的空間を見事に表現していて驚かされる。
国立リヨン管弦楽団は、団員の技量から言えばまだこれから伸びる可能性を持っているオーケストラだが、繊細な感受性と優れた機動力を発揮していて秀逸。
ドビュッシーはラヴェルほど自分のピアノ曲をオーケストラ用に編曲する作業に熱心ではなかったが、これらのピアノ曲が持っているオーケストレーションへの可能性は非常に高く、実際このセットのCDで聴いてみると、ミックスされた楽器の響きだけでなく、印象派特有の移り変わる色彩感や豊かな幻想性などを、より具体的に感知できるところに面白みがある。
管弦楽へのアレンジはラヴェルのほかドビュッシーの友人だったアンドレ・カプレや、現代の作曲家コリン・マシューズなどの手になる物で、それぞれ鮮やかな手並みで原曲の特徴を捉えているだけでなく、こうした編曲への必然性も納得できるものだ。
ボックスの大きさは13X13X5cmでCD9枚を収納するには大きめだが、縦型のしっかりした装丁で、ふたの部分も印籠のように縦に取り外すオリジナリティーにこだわったデザイン。
ライナー・ノーツは英、仏語で100ページあり、それぞれのCDごとの解説もかなり充実している。
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