2015年12月16日

サヴァリッシュ&バイエルン国立歌劇場のワーグナー:楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」


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2013年2月惜しまれつつ鬼籍に入った指揮者サヴァリッシュの業績を偲ぶために買ったCDのひとつで、彼は早くからオペラ畑でも頭角を現したが、ピアニストとして、また室内楽の演奏家としても評価が高かった。

そうした総合的な幅広い音楽観がサヴァリッシュの指揮に良く表れていると思う。

ミュンヘン生まれの指揮者サヴァリッシュは、およそ20年間音楽監督あるいは総監督としてバイエルン国立歌劇場に在任したが、当歌劇場を去るにあたって録音したこの『マイスタージンガー』は、彼と劇場の幸せな結びつきを証明する特別のもののように思える。

彼らが分かち合ったに違いない“おらが町のオペラ”の情熱がこの名盤を生んだのだろうか。

サヴァリッシュは自身が鍛え上げた柔軟で統制のとれたオーケストラとコーラスを手足のように駆使して、平易で説得力のある素晴らしい音楽を作っている。

サヴァリッシュの指揮は分かり易いということでオーケストラのメンバーからの信頼も厚かった。

抽象的な表現や要求はできるだけ避け、より現実的で隅々まで統制の行き届いた明晰な音楽作りがサヴァリッシュの特徴だ。

その点では同僚カルロス・クライバーとは対照的だったと言えるだろう。

決して即興的な指揮はしなかった堅実で理知的な指揮者だったが、誰にも引けを取らない繊細かつ情熱的な感性を持っていたのも事実だ。

1957年バイロイト歌劇場に当時としては史上最年少の33歳で起用され『トリスタンとイゾルデ』でデビューしたのもそうしたサヴァリッシュの実力が認められたからに違いない。

このセッションが録音されたのは1993年で、既にワーグナーの作品にも熟達していたサヴァリッシュの円熟期の職人的な技が傑出した、隙なく几帳面にまとめられた如何にもサヴァリッシュらしい出来栄えになっている。

聴衆を陶酔の渦に巻き込むような幻惑的な演奏とはタイプを異にする、文学と音楽とをより有機的に結び付けたサヴァリッシュのポリシーが伝わる真摯な演奏だ。

あくまでもワーグナー的なカタルシスの魅力を求める人にとっては意見が分かれるところかも知れない。

しかし決して冷淡な演奏ではなく、控えめだが豊かな情感が随所に感じられるし、喜歌劇としての明朗さがあり、また登場人物の性格を音楽で描き分ける手腕も見事だ。

それゆえ最後まで忍耐強く聴き取ろうという人にとっては、これほど良くできたセッションもそう多くない筈だ。

歌手たちも当時としては最良のメンバーが選ばれていて、深く豊かな声を聴かせるヴァイクルのザックスは極めつけ。

またヴァルター役のテノール、ヘップナーの力強い美声とロマンティックな歌唱も特筆もので、なるほどここは明るい南ドイツだったな、それに彼だから歌試合で優勝できるのだと納得。

ステューダー(エヴァ)やロレンツィ(ベックメッサー)も適役で、同オペラの立派な選択肢のひとつとしてお薦めしたい。

尚11ページほどのライナー・ノーツは廉価盤の宿命で歌詞対訳は省かれているが、英、独、仏語による簡易な解説が掲載されている。

総合芸術と言われるオペラをまとめることは、指揮者として秀でていても容易なことではない。

うるさ型の歌手陣1人1人に自分の音楽的要求を呑み込ませ、コーラスにも目を配らなければならないし、オーケストラとの限られたリハーサルや演出家が加わる舞台稽古への立会い、バレエが組み込まれている場合の稽古など、その規模が大きくなるほど仕事は煩雑化する。

『マイスタージンガー』のように実際の上演時間が5時間を超えるものであれば尚更だ。

勿論音楽面だけでなく、総ての関係者との人間関係がうまくいった時、初めて上演を成功させることができる。

サヴァリッシュはその辺りを絶妙に心得ていて、後年その仕事の煩雑さを忌憚なく吐露しながらも、誰とも衝突を起こさなかった稀な人物であった。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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